2012年10月31日
トリーター:唐亀

ソウシハギ


最近何かと話題になっている魚、ソウシハギ。当館へも取材や問い合わせが多くなっています。
以前、岩崎トリ―タがトリーター日誌でこの魚を紹介した時にはこんなに話題にはなっていなかったのですが・・・。

少し前、本種が北海道で捕獲されたというニュースは、さすがに今年の海水温の上昇などの影響なのだろうと思っておりましたが、その後日本各地から捕獲情報が相次ぎ、ちょっとした騒ぎになっているのはこの魚がフグをも凌ぐ「猛毒魚」だったからです。
この魚が有毒ということはかなり以前より知られていました。イワスナギンチャク等を好んで食べ、イソギンチャクの毒を体内に蓄えるのです。
ただし、ソウシハギ自体が南方系の種で、水産利用がほとんどされていないため一般的にはあまり目にすることのない魚でしたから、はじめて見る方も多かったのではないでしょうか。
大きな尾びれとウマヅラハギ以上の馬面、体色は黄色から紫に変化して黒点があり、その隙間を青いミミズ模様が入ります。
現在、季節来遊魚水槽に幼魚が収容されていますが、ご覧になっているお客さまから、
「体のつくりが分からない」
「どこまでが顔なの?」
「目の位置が後ろすぎない?」
というコメントをいただくことも・・・。
特に幼魚の頃は尾びれを含めて 3等身ですから。

このソウシハギ、幼魚はほぼ毎年相模湾に現れます。
時期は夏から秋、流れ藻や台風で港に押し寄せられた浮遊性のゴミなどについてやって来る、季節来遊魚の一つなのです。
幼魚の頃はコゲ茶色で枯葉や小枝のような容姿で、動き方もそれらに似せて擬態をしています。
一緒に来るのはナンヨウツバメウオやマツダイ、アミモンガラ。シイラやトビウオの幼魚などですが、その中でもソウシハギの幼魚はユーモラスでかわいいので私のお気に入りの魚でもあります。
因みに現在季節来遊魚水槽にいる個体は今年の夏に、江の島のマリーナでひらひらしているところを掬いあげられたものです。
ただし、幼魚は見られても、成魚はなかなかみられません。
かつて沼津で 4~ 50cmに育った個体を見たことがありますが、おそらく年は越せなかったのではないかと思います。

猛毒魚といっても、毒を使ってやみくもに攻撃して来る訳ではないので、過剰に反応しなくても大丈夫です。
食べなければ何の害もないのですから。
逆に当館ではある「お邪魔虫」を退治するために一役買ったエピソードがあります。
水槽にいつの間にやらはびこるセイタカイソギンチャク。
分裂することで増え、移動の際には少しづつ「かけら」を残します。
このかけらがまたイソギンチャクになります。
また、つぶしたり擦ったりして体をばらばらにすると破片がまた再生するくらい生命力が強いうえ、刺胞毒が強いので結構厄介なヤツなのですが、ソウシハギはこのセイタカイソギンチャクをもりもり食べてくれるのです。
難点は水温が高くないといけないことと、お腹がすくとサンゴイソギンチャクなどの食べて欲しくないイソギンチャクも食べてしまうことです(沼津で見た大きなソウシハギもサンゴイソギンチャクの群落で見かけました)。
少し前、シガテラ毒化したイシガキダイが北上して問題になりましたが、今回は本当にあちらこちらで見られますね。

しかもタイムリーなことに、これを書いている途中で葉山の漁師さんから大きなソウシハギがやってきまして、入口入って左の水槽に収容しました。
幼魚と成魚は趣が違いますのでぜひご覧ください。

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本日収容した「ソウシハギ」本日収容した「ソウシハギ」

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