2013年02月17日
トリーター:根本

2013年 深海生物を求めて 沼津深海トロール


日本で最も深い湾、それが駿河湾! 潜水調査船や無人探査機がこれだけ進化した現在でも、2500mにも達する駿河湾には、奇妙な生物がたくさん暮らしています。
そんな生物たちとの出会いを求めて今年も始まりました“深海トロール2013!”
トロールとは、底曳き網漁のことで袋状の網を海底に落とし、それを曳いて海底の深海生物を取る漁法です。深海トロール漁が盛んな沼津市では、市民は深海魚を食べて育つと聞きます。そうして育った沼津市民の杉村さん、深海トロール漁へのこだわりはハンパではありません!

午前 4時過ぎ、杉村さんと私は寒くて暗い中港へ向かうと、一隻の漁船がエンジン音とライトに包まれていた。
挨拶に向かうと「お!ギャルはどうした!?」との声が返って来た。本来は私ではなく北嶋嬢が乗るはずだったからだ。漁師さんは朝早くても寒くても元気!海の男はたくましい!
「野郎 2人ですみません!(笑)」と、こちらも元気に謝りつつ荷物を積み込み出港!

夜明けとともに 3名の漁師さんはてきぱきと準備を済まし、網を海中に投入。網が海底に沈むのを待って、ゆっくりゆっくり船で引っ張る。
10分ほど引いた後、ガンガン網を引き揚げてゆく。そしてあがってきた生物は船の甲板にドサッと広げられる。

そこから我々の勝負が始まる。甲板の上に折り重なって転がる深海生物、そこから飼育できそうな傷が少なく元気で素敵な生物を見つけなければならない。
駿河湾の深海はとても豊かだ。魚、サメ、エイ、エビ、カニ、ヒトデ、ウニ、貝、ナマコ、多種多様。「深海は暗く生き物が少ない、冷たい世界・・・」なんて、小さなころの図鑑で読んだが、そうでもない。暗く冷たいながらもさまざまな生き物がしっかり適応して生きているのがよくわかる。

漁獲物の選別をおこなう漁師さんの横で、魚やエビのトゲが他の生き物に刺さらないよう、慎重に捜索活動をおこなう。
引き揚げる時の急激な水圧の変化でみんな瀕死・・・、と思われるかもしれないが、案外みんな元気。アカザエビやオオコシオリエビなんかはビチビチ跳ねたり、ハサミを振り上げたり元気一杯だ。

一方、モロに圧力差に負けてしまう生物もいる。それは魚だ。水中で浮くためのガスの詰まったウキブクロ、これは水圧が無いとおさえが利かずに風船のように膨らんでしまう。膨らみ続けるウキブクロが体の中から内臓や目を傷めてしまうのだ。目は飛び出し、口からは内臓が出てしまう。その状態で生きている魚はさすがにいない。ただ、ウキブクロが無い魚は元気!意外とそんなもんなのだ。

「あ!メンダコ!」「お!ベニテグリ!」「うお!アカグツ!」元気な杉村さんの声が響く。杉村さんの笑顔がまぶしい。生物の世話は杉村さんに任せよう、私は生物の捜索と写真撮影、データの記録に専念しよう・・・。杉村さんの姿にそう思わせるオーラがあった。

今回は魚もエビもいろいろな生き物が採集できました!
現在はスター選手のメンダコアカグツが展示に出ていますが、玄人好みの渋い深海生物もマダマダいます!
全部で約 40種!傷を癒したり、餌を食べるように訓練したり、水族館で暮らす準備が必要ですが続々と紹介してゆきたいと思いますのでお楽しみに!

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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