2013年10月09日
トリーター:唐亀

まごころを君に

アナジャコの胸に付着した「マゴコロガイ」アナジャコの胸に付着した「マゴコロガイ」

先月の終わり頃、漁師さんの所へシャコを受け取りに行って来て、ということで出かけてみますとシャコではなくアナジャコが十数匹おりました。
アナジャコは干潟に穴を掘ってすむ、どちらかというとヤドカリに近い甲殻類です。
カメジャコ等の商品名で餌として売られていますので、釣りをされる方はご存知かもしれません。
また、潮干狩りの季節になると穴に筆を入れてつかんだ所を引き抜く方法で漁獲されるので、一度はテレビなどで見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

干潟にYの字の穴を掘り、水流を起こして穴に水の流れをつくり流入してくる細かい有機物を集めて食べています。
このアナジャコの作る水流は、干潟の泥の中に水流をつくり干潟の環境を保つのに一役買っています。

今回のアナジャコは、夜に集団で遊泳していたそうです。
アナジャコの若い個体は、特に冬の時期に穴を抜けて集団で遊泳することがあるそうです。
今回この中の一個体に「マゴコロガイ」が付着していました。
真心貝と書くこの貝はアナジャコの胸(歩脚の付け根)にくっついている、ややハート型の二枚貝です。
寄生性の二枚貝として、伊藤トリーターの研究でおなじみの淡水二枚貝の幼生、グロキジウム幼生がいます。
グロキジウム。
何らかのモンスターの名前のようですが、やることも魚のひれにとりついて体液を吸うという寄生虫らしい事をします。

マゴコロガイは足糸でアナジャコの胸にとりついていますが、体液を吸ったりはしていません。アナジャコ自身が摂餌する時に、作る水流で集めた細かい有機物をくすねているのです。
アナジャコは甲殻類ですから脱皮をします。
この時、マゴコロガイは脱皮殻と共に離れてしまう、訳ではありません。
一度移動したマゴコロガイは本体に仮付着した後、改めて胸にとりつくのです。
どちらにしてもアナジャコにとってはマゴコロガイはあまり「真心」といえるものではなさそうです。

現在、相模湾キッズ水槽に「まごころを持ったアナジャコ」を展示しております。
どうぞご覧になってみてください。

相模湾ゾーン

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