2013年10月17日
トリーター:伊藤

人気者たちが集う場所

タカクラタツタカクラタツ

“えのすい”の展示生物は、館の展示コンセプトに現場担当者の考えが加味されて選ばれます。
グランドオープン時のコンセプトのまま熟成を続ける水槽や、未だ発展途中の水槽、がらっと内容が変更された水槽もあります。

そんな中、お客さまから
「ねえ、あれいないの?」
「あの魚がぜひ見たいのだけど」
とご要望賜ることもあります。魚種指定の場合も多いですね。

お客さまの声は、案内スタッフや電話を経て現場へ伝わってきます。
そしてすぐさま、魚の入手に手を尽くす日々です。
入手できた生物は状態を整えてから、その魚が展示されるにふさわしいコンセプトの水槽に入れられます。
しかし、魚種によっては、ちょうどぴったりくる水槽がないこともあります。
そんな時はどうするか。
「この環境なら、まあ生息する可能性もある、かもね」というような水槽に収容されます。

前置きが長くなりましたが、暖かい海ゾーン「サンゴ礁水槽」手前の「ドロップオフ水槽」はそんな「舞台」によく選ばれます。

当展示は、サンゴ礁からがくんと深くなるガケの下、うす暗くて流れがよどみ、くずれ積もったサンゴや砕けた砂が積もる環境をコンセプトとしており、ぴったりくる魚種として、ヘコアユやクロユリハゼ類、テンジクダイ類の群れを選んでいます。
ご要望の絶えないタツの仲間は、過去いろいろな場所に登場させましたが、ここ数年はこの水槽に展示されることが多いです。
コンセプトにはよく合いますが、他の魚が多いので、餌が効率よくまわるように、透明なケースでセパレートして展示しています。
次にチンアナゴ
珍妙な行動から人気が高く、売店にグッズもありますし、常にお問い合わせがあります。
ニョロ好きの私としてもアリです。
ドロップオフの先(みなさんが立つ手前側とご想像ください)には広大な砂地になっているのだ、と拡大解釈し、ちょっとだけある砂地にすんでもらっています。
さらに最近、誰もが望む超人気種、カクレクマノミのご要望が。
うーむ、イソギンチャクもあんまりいないような、ちょっと深い場所の設定なのですが・・・ 人気のもととなる映画でも、いろいろ旅してますし、すぐ上の方にはサンゴ礁があるってことで、納得させています。

展示を立ち上げたころに比べると、コンセプトはちょっとゆるくなり人気者水槽と化し、少々違和感ありつつも、魚たちはストレスなく暮らせています。
飼育技師的には、健全な魚たちが水面から岩陰、砂中に至るまで無理なく利用する賑やかな状況に、満足感のある状況です。
奥まった場所にある水槽ですので、どうかお見逃しなく。

太平洋

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