2014年05月25日
トリーター:根本

ユノハナガニ 湯治中

プチ熱水噴出孔にむらがるユノハナガニプチ熱水噴出孔にむらがるユノハナガニ

大福のように白くて丸みのある深海のカニ、それがユノハナガニです。
深海の海底火山がある場所にしか棲まない深海生物です。
水深 400m~ 1200mくらいに生息し、火山活動で生じる温泉地帯のみで発見されています。
このユノハナガニという名ですが、伊豆小笠原の海形海山などの水深 400mほどの少し浅い海山の温泉地帯を上から観察すると、この真っ白なカニが散りばめられたように存在しており、このようすから温泉に咲く“湯の花”を連想しこの名前が与えられたようです。
良いネーミングですね~。

飼育は深海生物の中では難しい種ではなく、水圧もかけず水温調節のみである程度飼育ができ、餌もマグロでもアサリでもイカでもオキアミでもなんでも好き嫌いなく食べてくれます。
ただ、多くの個体を 5年 10年という単位で同時に飼育することには成功しておらず、繁殖もうまくいっていません。
まだまだ飼育方法の確立までには至っておらず、課題が山積しています。

このユノハナガニ飼育のポイントは、ずばり水温だと考えています。
展示水槽で現在飼育しているユノハナガニは、水深 1200mに棲息していた個体を調査・採集してきました。その棲息環境では水温は 4℃になります。
ただ、ユノハナガニは 4℃で飼うとイマイチです。
動きは鈍いし、餌食いも悪く、見ていて明らかに寒そうです。
4℃の水槽にヒーターや暖かい海水を筒で流し込むとワラワラと集まって、みんなで折りたたまれた布団のように重なりあって熱源に集まり、死んじゃったのではないかと心配になるくらいじ~っとしています。
中には完全にひっくり返り背中を一生懸命温める個体もいます。
このように暖かいのが好きなのですが、全体的に暖かいのは好まないようです。
体がすっぽり入るお風呂のような場所を水槽内に設置したことがありますが、ちょこっと中に入ってすぐに出てきてしまいます。お風呂と同じように頭から足の先まで浸かるのではのぼせてしまうのでしょうか?
これらに浅い水深では見られない理由があるのでしょうか???

現在飼育しているユノハナガニは、採集時の疲労が残っているのか、まだ本調子ではなく、餌をバリバリ食べるようになるまで現在調子を整えているところです。
好きな温度がよく解りませんので、強力な冷却装置がついている展示水槽を使い、水槽内で熱水を沸かして“プチ熱水噴出孔”を作り、好きなように温泉にあたってもらっています。
9個体いますが、みんなで気持ちよさそうにあたってくれています。
この湯治場所で水深 1200mから引きあげられた疲れを癒してもらい、元気になりましたら色々と実験や観察をおこないながら、少しずつユノハナガニの生態の謎に迫り、ゆくゆくは繁殖を目指したいと思います。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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