2017年08月13日
トリーター:唐亀

アンドンクラゲ、ハブクラゲ、うろん(胡乱)なクラゲ

アンドンクラゲアンドンクラゲ

今、海ではアンドンクラゲが多数出現中です。

クラゲは夏に現れると思われていますが、多分そのイメージのほとんどはこのアンドンクラゲのためだと思われます。

四角い傘に 4本の触手をたなびかせ、かなり積極的に泳ぎ回るクラゲで、体長 20㎝ほどになるものの、見事に透明なので目視で確認し辛く、刺されて気が付くことがほとんどです。刺されるとかなりの痛みがあり、触手にそってミミズ腫れになることもあります。また、群れる習性があり、時に大きな塊を作ります。
以前、三浦の磯でシュノーケリングをしていると、開けた水路の奥がそこだけぼやーっと白くなっていて、特撮映画とかの「時空が歪んだ穴」のようになっていて、近づくとおびただしい数のアンドンクラゲの塊でした。

アンドンクラゲは夜間光に集まる習性があります。アンドンクラゲの感覚器にはレンズの様なつくりがあり、かなり高性能な「目」を持っています。そのためか、日中水面近くにいるアンドンクラゲを採集しようと柄杓を近づけると、その影を避けて距離を取ったり深く潜ったりします。長い柄の柄杓で、距離のある場所にいるアンドンクラゲを採集するのは案外難しかったりします。

アンドンクラゲは飲み込める大きさの魚を捕食します。去年ややオレンジ色をしたアンドンクラゲを採集しました。これは珍しいと思いましたが、よくよく見ると傘の上部に 1㎝ほどのカサゴの様な小魚が少し消化された状態で入っていて、おそらくは魚の体液がクラゲの体に回って色付いていたのでしょう。ぞっとしました。

アンドンクラゲは飼育が難しいクラゲです。初夏の頃、時々見られる小さな子クラゲはブラインシュリンプで割と長く維持できるのですが、成長しません。今頃見られる大きくなったクラゲは、水槽に入れると数日は良く泳ぎ、シラスを与えると取り込む個体もいるのですが、水槽に傘をぶつけているうちに、傘が段々三角錐のようになって遊泳力が落ちて、衰弱してしまうのです。

アンドンクラゲの中には、少し前に新種記載されたリュウセイクラゲが混じります。これは極めて似ていて、生殖腺の形などを見なければ区別できません。昨年は 2個体ほどが採集されて展示することができました。今年はまだ出会えていません。

アンドンクラゲの近縁種には、悪名高い毒クラゲ「キロネックス」がいます。オーストラリアに分布していて、刺されると死亡することもある恐ろしいクラゲです。実は日本にも別種のキロネックスがすんでいます。南西諸島に分布するハブクラゲです。アンドンクラゲの上位互換のような姿で、箱形の傘の下には多数の触手を備えています。毒性はいわずもがなの強毒で、ハブクラゲのハブはもちろん毒蛇に因んでいます。

昨年当館にやってきたハブクラゲはシラスを良くとり、数か月飼育できました。そして、今年もハブクラゲがやってきました。いち早く展示に出したいとの思いから、本日 10時 10分からの「海月の宇宙(そら)」の後、強行でヤナギクラゲからハブクラゲに変更しました。ぜひご覧ください。

しばらくヤナギクラゲは仲間とバックヤードでお休みです。


ハブクラゲ

クラゲファンタジーホール

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