2017年12月29日
トリーター:伊藤

今週のおすすめ

クロソイクロソイ

先日、当館の図書整理の際、昭和中期に出版された日本産淡水魚の文献が「発掘」されました。
情報が古くて調べ事には向かなくなっているため、本棚の奥へ奥へ潜っていたのです。
思わぬお宝情報、面白い記述はないかと、手に取ってみました。
今回はあえて、それらの“古典的名著”の内容を照らし合わせながら、現在の展示種を紹介していきます。

クロソイ
太平洋(冷たい海)から相模湾ゾーンの岩礁水槽にやってきて 3年近く経ちます。
岩の間に逆さまに挟まって(本人は定位している)いたりしてお客さまからご指摘されることもあります。
シーラカンスっぽい雰囲気がカッコいいです。
参照した文献では「海の魚だが、川や潟湖にも入ってくる淡水魚」との記述がありました。
ネットなどで汽水域に入るらしいことは見たことがありましたが、文献では初めて見ました。
本種の寄生虫治療には淡水浴が躊躇なく行えそうだな、とか、汽水魚として展示するのも面白そう、なんて思ってしまいました。。

クロホシマンジュウダイ

こちらも太平洋(暖かい海)から相模湾大水槽(通称ジャブジャブ池)へやってきて長い魚です。
他に類を見ない丸っこい体型が魅力です。
参照した文献では「 1950年代に初めて日本で記録され、記録はほんの数例とまれである一方で、熱帯魚としてはよく流通する」とありました。
最近では、相模湾でも少ないながら見られるようになりました。
私も相模川で採集したことがありますが、沖縄で当たり前に見るのとでは、感激が違いますね。

アカメ
相模湾キッズ水槽で稚魚を展示しています。
かの「四万十川の怪物」です。
私が学生の頃、釣り好きの友人が「ビール瓶サイズのルアーを夜通し投げ続けるため、腕がパンパンになる」といってましたね(釣れたのかなあ)。
近年になって伊豆半島東部、相模川と相次いで記録されましたが、まとまった生息数があるのは、四国九州周辺に限られます。
一方、参照した文献では分布の広いこと!
東南アジアからオーストラリアまでいることになってます。
現在では海外産の本種は別種に分けられています。
バラマンディと呼ばれており、養殖もされており、釣魚としての地位を確立しており、オーストラリア産は淡水での飼育に向いているようで大型魚(飼育)愛好家に人気です。

キチヌ
相模湾大水槽にいるクロダイ似のオンリーワンです。
参照した文献ではキ「ヂ」ヌと記されてました。
古い文献だと、和名に「ヂ」とか「ヅ」がまだよく使われています。
これらの字があまり使われなくなった理由を調べてみましたが、説明が大変そうなので割愛します。
私はなんか好きです。ケフサイソガニを「ウミモクヅガニ」と記していたり。

他にもいろいろと面白い記述があり、気づけば何時間も読んでしまいました。
例えば謎の種類。ホソモツゴ、アゼタナゴ、クモトゲタナゴ、シライムギツク、といった見慣れない種名が、具体的な産地や外部形態の情報とともに明記されていたりします。
後者のほとんどは近い種の見間違いだったり、種内の変異の範囲内だったりして無効なのでしょうが、タキタロウ的なほんのりとした夢がありますね。
田園調布にいたタマバヤって、何だったのだろう、とか。
空き時間のいい趣味になりそうです。

相模湾ゾーン

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