2018年03月17日
トリーター:伊藤

相模湾のマス

サクラマスの稚魚サクラマスの稚魚

みなさまこんにちは。
3月 14日より、“川魚のジャンプ水槽”は華やかな雰囲気に模様替えしています。
レイアウトだけですと何なので、桜にちなんだ生き物をいくつか追加で展示してみました。
併設の小さな水槽でサクラマスの稚魚を展示しました。
こんなに小さな個体を飼育するのは初めてで、結構ドキドキしています。今のところ、小さな虫などをよく食べています。状態によっては別の魚と交代するかもなので、お早目にどうぞ。

さて、ここからは妄想も交えたマニアックなお話になります。
相模湾ゾーンでマスを展示するにあたって、マスについて調べていました。私自身マスについて明るくないので、知り合いのマス研究者に問い合わせたり、関連の論文を当たったりしてみたところ・・・。

その1.相模湾にサクラマスはいるの?

サクラマスには海に下って巨大に育つ「サクラマスと呼ばれるもの」と、川に留まる小型の「ヤマメと呼ばれるもの」とがいます。
ヤマメは相模湾にそそぐいくつかの川に自然分布する在来種です。西湘あたりを境に、西側は亜種のアマゴ(サツキマスの川にとどまるタイプ)に切り替わっていきます。
では、海で暮らす「サクラマスと呼ぶサクラマス」はどうでしょう。

まず、15年くらい前に、江の島の地先で漁獲されており、崎山トリーターが撮影した写真がありました。


体の模様が消えてギンギラになっています(スモルト化、銀毛化と言います)。見事ですが、亜種のサツキマスかも知れません。

他に、文献に基づく確かな情報として、三浦半島の先端にある毘沙門湾で漁獲された記録があります。こちらはサクラマスと明記されています。
つまり、非常にまれではありますが、相模湾にも「海に下るタイプ」がいる、ということになります。
ただ、これらがこの後川を上って産卵に至るかといえば、少なくとも近年においてはどうかな、と思います。マス類の海と川の行き来は、寒い地域ほど起こりやすいようなので、地球が寒かった時代には、相模湾に相当する海域でも本種やサケが回遊し、川に上っていたかも知れませんね(誰か化石とか貝塚の骨とかで突き止めた方、いないでしょうか)。

その2.川で生まれて海に下った稚魚はどこで暮らすの?

意外にも、現状ほとんど分かっていないみたいです。以下完全に妄想ですが、私は本格的な北方への回遊に入る前に、河口とか砂浜とかアマモ場といった「ゆりかご的環境」で過ごす時期があるのかなあ、と想像しました。ただ、こうした場所での調査はけっこう行われているにもかかわらず、ほとんどマスの話が出ないところを見ると、すぐに沖合いに出てしまったり、よっぽど短期間しかいないという可能性があります。

自然分布のニジマスはいないの?

これは完全に蛇足というか、ついでに気になったので調べていみました。正確なことは分かっていないみたいですが、日本の領海内で漁獲される銀毛個体の記録はぽつぽつ見つかります。日本において外来種として存在感を強めているニジマス、放流された個体が海まで流れて行って生き延びた可能性が高い一方で、調べると北海道のちょっと先、カムチャッカ半島に自然分布しています。ちょっとふらふら南下して、日本の領海で漁獲、みたいな自然分散のニジマス(スチールヘッド)がいるのではないかな、と妄想していました。

長くなりましたが、サクラマスのほかにも意外と色々な淡水魚を展示していますので、川魚のジャンプ水槽、ぜひご覧ください。

相模湾ゾーン

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