2018年06月29日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 その6 イサキ

イサキ(幼魚)イサキ(幼魚)

イサキ(Parapristipoma trilineatum)は、暖かい海流の影響を受ける九州、四国、本州沿岸に生息している魚で、体長は最大 45cmくらいまで成長します。
体長 20cmくらいまでの幼魚には、イノシシの子どもに似た 3本の暗褐色の縞模様があることから、“ウリボウ”と呼ばれています。

産卵期にあたる 6~ 7月の梅雨時に脂がのっておいしくなることから、旬のイサキは“梅雨イサキ”と呼ばれて親しまれています。
なんといってもその刺身は絶品で、風味、うま味、舌ざわり、口どけ感、といった全てのバランスがとれたその味に、「こんなおいしい魚がいたのか!?」と初めて食べた時の衝撃は忘れられません。
それ以来「どの魚の刺身がおいしいですか?」と質問を受けた時には、真っ先に「イサキ」と答えるようにしています。

皮もおいしいので、塩焼きもおすすめです。
また、真子、白子と呼ばれる卵巣や精巣も珍味なので、梅雨時のイサキは、釣りの対象魚としてもたいへん人気があります。
魚屋さんでも見かけることが多くなりますので、旬のイサキをぜひお楽しみください。

こんなに味が魅力的なイサキですが、成魚の姿形にはこれといった特徴がなく、シンプル過ぎて相模湾大水槽では目立たない存在となっているのが残念です。
そんなイサキが唯一目立つ瞬間があります。
それは産卵シーン。
夏の Night営業時間に、水槽照明を落として暗くすると、成熟したイサキが次々と産卵を始める時があります。
相模湾大水槽の中層付近を泳いでいるイサキの群れの中から、雌と雄が急上昇して放卵、放精を行います。
するとマイワシの群れが目敏く見つけて、放卵場所に向かって一斉に泳ぎ始めます。
マイワシは海の中でただ食べられてしまうだけの存在では無く、他の魚の産んだ卵も食べて生きていることがわかる瞬間でもあります。

このように生命の神秘、生き物同士の関わりを垣間見ることができることが、水族館の魅力なのかも知れません。
夏の夜は、イサキの動きに注目です。


イサキ

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