2012年03月30日

石垣島(3)在来の陸貝はいずこ

  • 期間:2012年3月28日~3月31日
  • 場所:石垣島
  • 目的:陸棲及び淡水棲生物の調査
  • 担当:伊藤


気を取り直して、きのうとは違った場所を探してみることにしました。
川や林、マングローブ。
魚や昆虫目当てでは行ったことがありますが、今回はカタツムリに注目して再び調査です。

1日目の日誌でお伝えしたように、マングローブでは非常にたくさんの巻貝がいます。
ムシロガイやカノコガイ、ウミニナの仲間などです。
これらをカタツムリと呼ぶにはちょっと違う気がしますが、潮が引いている時に、水の浮力を借りずに泥上や樹上で元気よく活動しているようすは、まさに陸貝の趣です。
逆に江の島などの磯には、海のカサガイそっくりなカラマツガイ(分類学的にマイマイに近い)がいたりします。
イワガニ類もそうですが、貝でも、マングローブがあると岩から樹上に棲むものが出てくるから不思議です。

一方、海水の影響を受けなくなる川の上の方になると、貝の姿はぐっと減ります。
水田の水路まわりではスクミリンゴガイに加え、トウガタカワニナ類や小さなモノアラガイ類がいますが、川の本流ではシジミ類がぽつぽつ見つかる程度。
そんな中、川べりの草にくっ付く数ミリの巻貝を発見。
ヒラマキガイの仲間(これもマイマイに近い仲間)です。
しかし小さい。これは魚に目がいっている普段では、絶対に見落としてしまいます。

車でどんどんと内陸に向かうと、標高が高くなるにつれ、林道に変わります。
道路わきには巨大なシダやサキシマスオウノキが立ち並び、ジュラシックパークの世界です。
地面には落葉や倒木が積もり、くぼんだところには水がたまってじめじめしています。
ただやはり冬だからでしょうか。カタツムリは貝殻ばかりで、生きたものはなかなか見つかりません。
かっこいい「タイワンサソリモドキ」を見つけては、モチベーションを回復させ、シロアリの群れや巨大なムカデに驚きながら捜索を続けていると、いくつか見つけることができました。
大きな貝殻と野趣溢れる茶色い模様が特徴のカタツムリらしいマイマイです。
イッシキマイマイでしょうか。冬眠状態で、湿り気を与えても顔を出してくれませんでした。

反対に、とても小さく細長い巻貝もいました。キセルガイの仲間です。
この仲間は微小でよく似た種類が多いため、完璧な同定には骨が折れそうです。
ところでキセルってわかりますか?
タバコを吸うためのパイプのような道具で、日本で見かけることはほとんどありませんね。
戦国時代や江戸時代を題材にした漫画の中で、武将や大泥棒がぷかぷかふかし、時に武器にするアレです。

この貝を見てください。巻きが左右逆です。
クロイワヒダリマキマイマイと思われます。
石垣島には、カタツムリの肉を引き抜いて食べるヘビがいます。このヘビは、右巻きの貝を食べやすいように適応しているので、それに食べられにくく進化しているみたいです。

殻が平べったくて、お皿のようになっているのはツヤカサマイマイ。てかりのあるだんだら模様の殻が小さいながら美しいです。
黒い肉の色と、長いつのがペガッ○星人みたいです。

そしてこれ、貝殻の縁に回転ノコのごとく毛が生えているクロイワオオケマイマイ。
「ケマイマイ」の中で日本最大で、直径4センチ以上になるそうですが、今回観察できたのは1センチくらいの幼体でした。
これの大きい個体をぜひ見てみたいし、皆様にもお見せしたいです。

と、結果的に多くのカタツムリたちを観察することができました。
これらの暮らしぶりを知った上で、その魅力を最大限に引き出し、展示や保護活動につなげられるようにしたいです。

何度も出会ったタイワンサソリモドキ。何度も出会ったタイワンサソリモドキ。

こんなに小さなものもこんなに小さなものも

大きくて迫力のあるイッシキマイマイ大きくて迫力のあるイッシキマイマイ

不思議な形、キセルガイの仲間不思議な形、キセルガイの仲間

左巻きことクロイワヒダリマキマイマイ左巻きことクロイワヒダリマキマイマイ

太平洋

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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