2012年03月31日

石垣島(4)やっぱり身近に貴重な自然

  • 期間:2012年3月28日~3月31日
  • 場所:石垣島
  • 目的:陸棲及び淡水棲生物の調査
  • 担当:伊藤

まる3日間石垣島内をうろうろして、疲れを感じるものの、気力はみなぎっています。
でも、もうそろそろ本土へ帰らなくてはなりません。
名残惜しい!
沖縄本島や鹿児島南部と比べてもスケールの大きなマングローブや、魅力溢れる固有種の数々を目の当たりにすると、神経が刺激され、日ごろのストレスなど吹き飛んでしまいます。
今回の調査の結果を踏まえ、機会があればまた訪れたいものです。

陸貝の調査がメインだったとは言え、朝から晩までいろんな生物を見つけに出かけ、観察することができたので、一部を紹介しますね。

タナゴモドキ発見!
当館では天皇陛下のご研究コーナー「絶滅危惧種のハゼ」水槽で、国外産の個体たちを数年にわたり展示しています。
石垣島では今回、実に10年ぶりに出会うことができました。前回訪れた時は全く見られず、「もしや絶滅したのか」と不安でしたが、生き延びていてくれて良かったです。
淡い飴色の色彩は、派手さはないものの、やはり美しい。本種の子どもは海で育ち、時に海流で四国あたりまで流されて育つこともありますが、豊富に生息するのは台湾よりも南でしょう。
石垣島の同所には大きなタイワンドジョウやティラピアといった外来種が幅を利かせていますし、同サイズのカダヤシやグッピーが住処を奪っているかも知れません。

タウナギの幼魚でしょうか。
石垣島のものは貴重な日本在来の個体群と判明していますので、そのうち新種になるかも知れません。
一方で本州には大陸産のタウナギが外来種として定着しています。
姿かたちがそっくりな在来種と外来種。これらを区別し、保護と防除を実行しなくてはなりません。
種そのものは、とても魅力的なので、いつか展示で取り上げてみたいと感じました。

これはサワガニの仲間です。
石垣島には 3種類くらい、本土とは違う種類が棲んでいるようですが、渓流部でひっそりと暮らしており、マングローブのカニ類のように数は多くありません。
地味ですが南国情緒あふれる、素朴な陶器のような色合いは見ていてうっとりします。

そして、ヒメフチトリゲンゴロウ。
ご覧の通り大きいです。
日本の南西諸島から東南アジアにかけて生息する南方系の昆虫で、日本では数がとても少ない絶滅危惧種です。始めて実物を見たので感激しました。
これらの減少原因は、開発や農薬だといわれますし、概ねそうなのでしょうが、一方で人の手が加わった人工の水辺でも見つかったりします。
これらライフサイクルの短い昆虫類を守るには、成虫のほか、産卵場所や幼虫の食べ物など、複数の条件がそろわなくてはなりません。それらを解明することが水族館職員も含む生態学者の急務です。

水族館の方へは、展示や生態の研究のために、今回紹介した生物の一部を連れ帰っています。
そのいくつかは早速、冷たい海・暖かい海ゾーン発見の小窓“小さな地球”で展示しておりますし、今後テーマ水槽などでも展示の機会を作りたいと思いますのでご期待ください。
展示を通し、飼育観察を続け、繁殖や保護に役立つ情報を少しでも多く記録してゆければと思っております。

マングローブの夕刻マングローブの夕刻

巨大な肉食エイリアン「タイワンドジョウ」巨大な肉食エイリアン「タイワンドジョウ」

希少な珍種「タナゴモドキ」希少な珍種「タナゴモドキ」

そのうち新種になるかも「タウナギ」そのうち新種になるかも「タウナギ」

サワガニの仲間サワガニの仲間

太平洋

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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