2013年08月21日

研究フィールド探訪(3)地元の田んぼを再探訪

  • 期間:2013年8月21日
  • 場所:境川と引地川水系の水田
  • 目的:研究フィールド探訪
  • 担当:伊藤
神奈川県南部某所の水田地帯神奈川県南部某所の水田地帯

みなさま、こんにちは。
青森から帰ってきた翌日、モチベーションはそのままに、過去に研究フィールドとした地元の水田に行ってきました。

まずは境川沿いにある水田です。
ここで研究したのはカエル。“えのすい”でウミガメ以外の爬虫類、両生類を研究し出したのは、ここ数年のこと。カメもカエルも大好き北嶋さんと共同で取り組み、特にヌマガエルの分布拡大について調べた結果が論文になったのが、つい半年前のことです。

数年前、江の島に突如出現したヌマガエル。
私たちは江の島の西にそそぐ境川から流されてきたのではと想像し、川の上流側を調査しましたら、ありましたヌマガエルの多産地帯。本州中部以西に分布するとされる本種ですが、その東限はどうもはっきりしません。
地元の農家の方は「昔っからいたよ」っていいますし(よく似たツチガエルはいないのです)、まだまだ謎は残されています。

次に向かったのが一つ西側の引地川沿いにある水田です。
ここには、トウキョウダルマガエルが生息します。水田の変化に伴って、特に数を減らしている種です。
私が子どものころは、相模川の支流である千の川流域の水田にもたくさんいたのですが、その場所は畑や宅地に変わっています。
そんなわけで神奈川県南部ではほとんど生息地が残っていません。
何年か前に、ぎっちり三面護岸された水路で、冬眠する本種をたまたま見かけました。
本種に限らず、カエルの冬眠にはわからないことがたくさんあります。
「田んぼの近くの土の中で寝てるのでは?」と思うでしょう。
どうもそう単純ではないみたいです。
土に潜って「ガン寝」する場合や、水中の落ち葉の下で「仮眠」する場合など、種により地域により違うみたいですが、まとまった研究事例は意外なほど少ないのです。カエルとの共存には、産卵場所と同じくらい冬眠場所の保全が重要だと考えられます。
ついでに周りの川や水路も見て回ると、日向ぼっこするカメやメダカも見られ、一見いい自然です。
しかしながら、この2つは当地において外来種です(メダカの方は在来の可能性も信じたいですが)。
身近な自然は、私たちが気づかないうちに、特定の種類がいなくなったり、生物が外来種に置き換わったりしています。そうした変化に気づいたとき、ものをいうのはしっかりとした記録であり、それらを取りまとめた報告書や論文だと確信します。
それらをおこなうのも、水族館の学芸員の使命だと肝に銘じています。

テーマ水槽

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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