2018年04月05日

伊豆諸島海域調査航海(3)航海日誌 3日目

  • 期間:2018年4月3日~4月6日
  • 場所:伊豆・小笠原弧
  • 目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明
  • 担当:杉村
チムニー(○部分が「ユノハナガニ」)チムニー(○部分が「ユノハナガニ」)


調査航海3日目、天候は良し、風と波は少々有りますが潜航調査可能です。
・・・ですが、あすの朝 9時にはこの調査海域は強い風に見舞われるとの情報あり。
そのため、きのうより1時間半ほど前倒ししての調査開始です。

本航海には 2つの研究課題のグループが乗船しています。
きのうは私の参加しているグループの潜航でしたが、きょうの潜航は本航海を取り仕切る首席研究者のグループの潜航日です。
潜航場所はそれほど変わらず、熱水の噴き出るチムニー群に棲息している生物の調査です。
白く立ち並んだチムニーの中から調査にちょうど良いものを探して海底を探索していきます。

きょうは、そんな調査の対象になるチムニーに集まる深海生物を 2種類ほど紹介しましょう。

まずは、チムニーの表面に巣を作って生活している「イトエラゴカイの仲間」です。
大きさが 1cm程度の小さなゴカイの仲間で、びっしり集まって集団で生活しています。
体前部には花飾りのようなエラがあり、じっと見ていると妙に愛らしい生き物に見えてきます。
巣から出すと、あっという間にみんなが寄り集まって大きな団子状になります。
広い深海の海底でどのようにしてピンポイントで熱水の噴出するチムニーを見つけられるのでしょうか。
とても不思議な生き物です。
熱水噴出域で特異的にみられる、熱水と周囲との温度差や噴出されるガスなどが関係しているかも知れませんね。
とても興味深いですね。

そして、熱水噴出域の生物といえば大きさが 5cmを優に超える大型甲殻類「ユニハナガニ」です。
今回の調査でも、ほぼ必ずチムニーで観ることができました。
ユノハナガニは、深海生物でありながら自分から熱水の近くに好んで集まってくる不思議なカ二です。
熱水を温泉に見立て「ユノハナ」がその名の由来にもなっています。
深海で観察していると、イトエラゴカイがほとんど移動しないのとは対照的に、チムニーの周囲を頻繁に移動しています。
大型の個体はそれぞれの縄張りでもあるかのようにある一定の間隔で散らばっています。
大型の個体同士が出くわすと、その大きなハサミでケンカをするようすも観察されました。
“えのすい”では、繁殖までもう一歩まで飼育が可能で、彼らの繁殖生態について研究を続けています。
深海生物の繁殖をおこなうことは、その知られざる生活史を知る大きな手がかりになります。
私たちは飼育研究をおこなうことで生態の解明をおこないたいと考えています。

間もなく、ハイパードルフィンの潜航調査が終了します。
これからまた、サンプル処理で第 2研究室は慌ただしくなっていきますが・・・
どうやら、あすからの強い風のため、きょうの潜航が最後という情報も・・・。
どうなってしまうのでしょうか?!

さて、あすは!!
気がかりですが、きょうはここまで。
では、またあした。


イトエラゴカイの仲間


仕事中の私(日誌書いてます)


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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