2019年02月26日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その2

海の表層水温が下がる冬場は、深海生物の採集には絶好のチャンス。
今年もメンダコをはじめ、深海性の魚類や甲殻類を求めて、えのすいトリーターは冬の海へと繰り出しています。
そんな深海シーズンの 2月に紹介する魚は、ツボダイPentaceros japonicus )です。
ツボダイは南日本の太平洋沿岸から琉球列島にかけての、水深 100~ 400mくらいに生息している深海性の魚類です。
やや尖った口に大きく丸い眼、平たく丸い体と不釣り合いな感じの、鋭い大きな背びれが特徴的な魚で、25cmくらいにまで成長します。

特徴はあるものの、一見すると比較的小型で地味なのですが、深海魚の中では“知る人ぞ知る”トップクラスの美味しさを誇る魚です。
塩焼きや揚げ物は絶品で、焼いた皮の香ばしさ、表層の魚では味わえないような脂の旨みと甘み、ちょうど良い歯ごたえと口どけ感に、お酒やご飯がどんどん進みます。

2015年の 1月に、沼津の深海生物採集に出掛けました。
底曳網船は午前 2時出港なので、前日の夕方に沼津入りして、港で夕食をとることにしました。
この時食べたツボダイの塩焼き定食は、4年たった今でも思い出すくらい美味しかったです。
ツボダイを食べて頑張った採集のようすは、航海・採集日誌の[ 2015/01/14 沼津 深海生物調査 戸田採集日誌/岩崎 ]で紹介していますので、そちらをご覧ください。

さて、ここまでザ・深海魚として紹介してきたツボダイですが、実は幼魚のころは沿岸の表層近くでも生活をしています。
10cmくらいまでのツボダイの幼魚は、相模湾では定置網で混獲されたり、場合によっては堤防で釣れたりすることもあります。
ツボダイは、比較的水温が高く、餌が豊富で、深海性の凶暴なサメや大型のイカといった、捕食者が少ない沿岸の浅い海域で成長してから、深海へ向かう戦略をとっているようなのです。
成魚になったツボダイの美味しさの秘密は、食べている深海性の餌の味が反映されていると思われますが、生存競争も激しいのでしょう。
深海で生活するには、高圧低水温の環境の中で餌を捕まえて、外敵から身を守る身体能力が欠かせないのではないかと思われます。
おいしい深海魚として知られているムツの仲間も、同じような生活スタイルを選択しているのは、たいへん興味深いところです。

“えのすい”のツボダイは、深海生物の展示がスタートするタカアシガニやキンメダイの飼育水槽で展示しています。
探してみてください。

[ 2019/01/28 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その1 ]

相模湾ゾーン

RSS