2019年05月07日
トリーター:伊藤

相模湾のシオマネキ

ハクセンシオマネキハクセンシオマネキ

岩礁水槽と並ぶ当館の「熟成系展示」である海岸水槽 干潟(江奈湾 三浦市)。ここ一年くらい、いろいろと新しい試みを加えまして、通好みの面白い特徴が出てきています。

その筆頭は、昨年夏に展示したハクセンシオマネキです。冬の間はあまり出てこず、心配していたのですが、春になり、わっと地上に出てくるようになりました。長期飼育に成功している、といってよいのではないでしょうか。

相模湾では非常にレアな種でしたが、最近では小網代干潟などでちらほら見られるようになってきたそうです。
私はまだ相模湾で出会ったことがないのですが、西日本に出張した際に、何度か自然のものを観察しています。意外だったのが、あまり底質を選んでおらず、そこかしこに見られたことです。干潟のいわゆる“スナガニ類”は、種類によって、べとべとの泥を好んだり、引き締まった砂地を好んだりするのですが、本種はそうした環境に加えて、ヨシ原の中や、石がごろごろした場所にも生息していたのです。飼育下においても、その特徴が飼育しやすさに繋がっている気がします。

泥の表面にあたる光の量を増やしたりもしました。泥表面にカニの餌となる微細な藻類が生えやすくするためで、チゴガニやヤマトオサガニも以前より元気そうで、長生きするようになりました。時間帯にもよりますが、多数のカニたちが砂上で踊っているようすは、なかなか自然さながらの再現度だと思います。

つい最近では、陸上に植物を植えてみたりしています。ぱっと見、明るい展示なのですが、実は植物を育てるには暗すぎる(照度が足りない)ので、まずは、日陰の庭でも育つような種で試してみています。潮しぶきがかかる環境でもあるので、うまく行くか不安ではありますが・・・。
これからも面白い干潟の要素を取り入れて、展示を熟成させていきたいところです。ご期待ください。


海岸水槽 干潟(江奈湾 三浦市)

相模湾ゾーン

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