2021年10月23日
トリーター:加登岡

油壺からの贈り物

同じ神奈川県にあります京急油壺マリンパークが9月末で惜しまれつつも閉館となってしまいました。

私は神奈川在住であったため、幼少期によく遊びに行きました。私が生まれて初めて行った水族館も京急油壺マリンパークでした。

飼育員の道のりはその時から始まっていたのかもしれません。
また、私が好きなサメの展示を多くしており、今年もオオワニザメが展示している情報を聞きつけ、知ったその日に急きょ見に行きました。
その数日後に閉館のお知らせを知りおどろきました。
残念ではありますが、油壺マリンパークで大切に育てられた生き物たちはさまざまな水族館へお引越ししております。

私の担当する水槽にも引っ越してきてくれました。
例えばサンゴの仲間、トゲトサカの仲間やセンスガイの仲間たち。
トラックで運ぶ時に他の生物に押しつぶされてしまわないように虫かごに入れて運ばれて来ました。


虫かごから出すと京急油壺マリンパークでの飼育時の形跡が見られました。トゲトサカの仲間は比較的流れのある場所に生息するため、岩などに根を下ろして流されないようにして生活しています。飼育時にはこの根を下ろすまでの間、なにかしらの方法で流されないように固定することが多いです。


京急油壺マリンパークではトリカルネットに先の尖った少し柔軟性のある棒で刺して固定していました。
使う道具などは当館と違っており、大変勉強になりました。
また、トゲトサカもしっかり根を下ろしていており、状態の良さがうかがえます。このいただいたトゲトサカを今度“えのすい”で展示できるようにトリカルネットから取り外し、岩に乗せ、京急油壺マリンパークで使われていた棒をそのままお借りし、岩に固定しました。後は新しい土台に根を下ろしてくれることを待つのみです。キンメモドキとチンアナゴのいる水槽で現在展示中です。


その隣のカクレクマノミの水槽ではハタゴイソギンチャクが仲間入りしました。
入れてすぐにカクレクマノミたちは新しいお家だと大はしゃぎ!
今までのお家(アラビアハタゴイソギンチャク)をよそ眼に体をイソギンチャクにうずめていました。


さらにトロピカル水槽には体重 2㎏ほどある大きなニシキエビが鎮座しています。


この水槽で 2番目に大きい生物(1番はドクウツボ)なので迫力があります。すでに餌をモリモリ食べており、あとは環境に慣れてくれればよいなと思っています。
ここまで大きいサイズなのは京急油壺マリンパークでそれだけ大切に育てられていた証拠です。
命を引き継いだプレッシャーはありますが、“えのすい”にきてよかったと思ってもらえるように頑張りたいと思います。

その他にもバックヤードには展示に向けてトリートメント中の生物がたくさんいます。
状態をみて随時展示予定です。
子どもの頃からの思い出と今までの感謝を込めて、京急油壺マリンパークから受けついだ生物たちが“えのすい”でさらに輝けるように努めてまいります。
みなさまもぜひ見にきてください。


※ニシキエビの展示は2023年2月17日をもちまして終了しました。

太平洋

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