2023年02月27日
トリーター:山本

始まりのクラゲ

きょうは、思わず写真を撮ってしまうほど海が穏やかで、気にしてたことがどうでもよくなっちゃうような暖かい日でした。こういう日のクラゲ採集はなんだかワクワクしてしまいます。

本日のクラゲは 1種類 4匹。採集できたのはオオタマウミヒドラHydrocoryne miurensisです。

本種は 2~ 3mmほどのあまり目立たないクラゲですが、私が大好きなクラゲのひとつです。
江の島では一年中見られますが、おもに春~夏にかけてたくさん出現します。本種が記載されたのは 1902年。神奈川県の「三浦」で採集されたポリプをもとに記載され、種小名の「miurensis」には、「三浦」の意味が込められています。実は我らが「相模湾」と深いかかわりのあるクラゲなのです。

このオオタマウミヒドラは、私にとって始まりのクラゲでもあります。
学生の頃、江の島でクラゲ採集を始めた私が、初めて自分の力で採集できたクラゲがこのオオタマウミヒドラでした。瓶の中で 1匹のクラゲを見つけた時のあの感動は、今でも鮮明に覚えています。そして、図鑑でその存在やサイズは知っていたはずなのですが、実際にみると本っ当に小さくて何クラゲか全然分からず、「ウラシマクラゲ(ちょっと似てるクラゲ)が採れた!」と研究室の仲間に見せてまわり、はしゃいでいました(笑)。それからコツを掴み、今ではクラゲ採集が私の得意技となっている訳なのですが、きっとあのオオタマウミヒドラが採れてなかったら、あの感動を味わえていなかったら、私の人生は変わっていたんだろうな~と思います。大切なことを教えてくれた、間違いなく私の人生を変えた一匹です。

今朝、漁港で海をのぞいたときに、ふわっと触手を広げて漂っているこのクラゲを見つけてなんだか懐かしい気持ちになりました。きょう“えのすい”に来たオオタマウミヒドラたちも、水槽の中で誰かの人生を変えているのかな。

クラゲサイエンス

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