2008年03月17日
トリーター:寺沢

走れ、俺!ゴールは遠い!

給水地点でドラマは起こる。
人の流れに負けて水が取れずその後のペースダウンを招いたり、転んで靴が脱げ集団から遅れをとり名言をはいた選手がいたり、あえて水を取らずにスパートの起点にしたり、その一方で、水を取りそこなった選手に分け与えたり、時として微笑ましいシーンを目にしたりもする。
悲喜こもごも。

人生初の給水地点が見えてきた。一応、10kmにも一か所設置されている。
あと 20m、19mm、18m、右手で取るか、左手にするか、水か、スポーツドリンクか、あれこれ考える。
後ろを振り返り、位置確認。前の一団がスピードを緩め、ぶつかりそうになる。
あと 12m、11m、10m。
給水地点の練習だけはしておけばよかったと悔やむ。
人の群れでテーブルが見えない。あと 6m、5m、4m。やばい、このままではぶつかってしまう。
その時、もう一人の自分が囁く、「妻が勝手に申し込んで走らされている訳だし、止まればいいじゃん」。
そうだ、止まって水を飲もう。一気に一杯飲み、太腿と首の後ろにも水をかける。バナナが目にとまる。だが、しかし、バナナを食べているマラソンランナーは絵にならない。やめておこう。気分はいつでも一流アスリート。

給水地点を過ぎて、しばらく走ったころ、突然、『小田原市早川漁港』の文字が左に見えた。
うそ、思わず出た言葉。一瞬、えのすいトリーターになる。
1989年の夏、 1頭のカマイルカを保護したことがある。その名をポートと呼び、しばらく私が担当した。
定置網に迷入したイルカを2、3頭引き上げ、港まで運びそこで放したら、1頭だけいついてしまい、当館に協力要請があり保護したという訳だ。
しばらくの間、昼夜を通して背びれから点滴治療を施し、視力障害は残ったものの回復した。その後、そのイルカは 4年以上生存した。それがここだったとは・・・ 郷愁に浸っている自分をランナーへ引き戻す。さあ、走れ、ゴールは遠い、先を急ごう。

栄えある第 1回湘南国際マラソンのスタート地点は当館で、2回目は大磯プリンス。
やっぱり、湘南は江の島でしょ、お願いしますよ、3回目。来年も走るから。

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