2008年11月20日
トリーター:伊藤

最北を観に南へ

先週末、鹿児島大学で開かれた日本甲殻類学会の第 46回大会に参加し、発表をしてきました。
こちらの日誌でも何度か紹介している「カニの木登り展示」についてです。
マングローブの樹上で一生の大部分を過ごすカニたちの行動を引き出すために、裏でチクチクと調べたりしていたので、それらをまとめてお話してきました。
甲殻類の研究者に囲まれる経験は初めてでしたが、多くの方が当館の発表に興味を持ってくださり、面白い情報交換もできました。

ところで偶然でしょうか、鹿児島には世界最北のマングローブ(ヒルギ群落)があるのです!
これはぜひ観ておかねば、というわけで、鹿児島入りを 1日早めまして、長靴装備でいざ泥の世界へ。

訪れたのは喜入(湾内)、万乃瀬川、大浦川(東シナ海側)の 3か所で、中でも印象的だったのが大浦川でした。
野間岬の根元に広がる河口には、正真正銘のメヒルギ(リュウキュウコウガイ)群落があり、ここは沖縄か?と錯覚するような風景が広がっていました。
まさか学会前日にマングローブに立つとは夢にも思いませんでした!
泥上にはトビハゼやハクセンシオマネキ、アシハラガニの大群、ちょっと石がゴロゴロしたところには大きなハマガニやハサミの先が血のように赤いユビアカベンケイガニ、そしてヒルギの樹上にはフタバカクガニが出迎えてくれました。
この日はちょうど暖かくて、生物たちは結構活発に動き回っており、残り 2地点も程度の差こそあれ、生き物の気配に満ち溢れていました。

しかし、鹿児島とはいえ冬は寒くなるはずです。
温帯において、メヒルギが枯れずに育つものか?
カニたちはどうやって冬を越すのか?
発表を翌日に控えて、新たな疑問が浮かぶ始末です。

鹿児島といえば「桜島」、「篤姫」、「焼酎」という感じですが、私の中では「メヒルギ最北の楽園」に決定です。

大浦川のメヒルギ。まさにマングローブ!大浦川のメヒルギ。まさにマングローブ!万乃瀬川支流のハクセンシオマネキたち万乃瀬川支流のハクセンシオマネキたち特別天然記念物、喜入のメヒルギ。散水設備で世話?特別天然記念物、喜入のメヒルギ。散水設備で世話?

太平洋

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