2010年06月10日
トリーター:伊藤

まだ見ぬ相模湾 3


泥の海を再び訪ねて
4か月ほど前に長年担当した暖かい海のマングローブ水槽(今は別の水槽になっています)を離れ、今度は相模湾の干潟水槽を扱うことになりました。
先日、2度に分けて展示生物の採集におこなってきました。
干潟での採集はすこし前に植田さんがアップしてますので、私はもう一つの採集についてお話します。

場所は、ある川の河口です。三面張りの護岸には冬の味覚でお馴染みカキがたくさんくっ付いているのですが、さらに深い場所、水深 2~ 4mには「カニヤドリカンザシ」という外来管棲ゴカイがゴッソリと付着しています。
ハオリムシのようなストロー状の巣が複雑に絡み合った塊は、ちょうどお湯を注ぐ前のカップラーメンのようです。
これを採取してほぐしていくと、細かい隙間からいろいろな生き物が掘り出されます。
特にテッポウエビ類やサツキハゼが多く、アカオビシマハゼ、イダテンギンポといった種に加えて、タネハゼのような関東では珍しい魚も見られました。
これらは沿岸水槽の一番浅い水槽に収容しましたので、ぜひご覧になってください。

さて、この採集ですが、実はかなり過酷です。
視界数センチの泥水に素潜りして、カニヤドリの巣をボコッと外して抱きかかえ、水底を歩いて陸まで運ぶのです。
途中息が続かなくなり、水底を蹴って水中ジャンプして呼吸しますが、10kg以上のウェイトを腰に巻いている上に、手にも塊を抱えているので、四苦八苦、アップアップと、傍から見たら溺れているように見えてしまうでしょう。
スイトンの術のような、ツツが欲しいところです。
この採集に行く時には、事故防止と心の支えに、陸で見守ってくれる人が必須です(・・・一緒に行った植田さんは浅場で子ボラを追いかけていましたが)。

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ねらった藻とは違う藻のの
まだ見ぬ相模湾

カニヤドリカンザシとサツキハゼカニヤドリカンザシとサツキハゼ相模湾では3年前に初記録されたタネハゼ相模湾では3年前に初記録されたタネハゼ

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