2011年07月19日
トリーター:根本

オハラエビ


 「♪小原庄助さん なんで身上つぶした
 朝寝 朝酒 朝湯が大好きで
 それで身上つぶした
 ああもっともだ もっともだ」

でお馴染み(?)の「朝風呂大好き小原庄助さん」から名前をもらったエビ、それが深海に棲んでいるオハラエビ。
深海といってもただの深海ではありません!
多くの種は海底火山などの近くの海底に湧く温泉の近くに棲んでいるのです!(一部の種は地殻の沈み込み帯に発生する硫化水素やメタンを含む水が沸く“湧水域”にも棲んでいます。)

オハラエビの仲間(オハラエビ科)は毎年のように新種が発見されていますが、私が大学院で研究していた4年前までは 7属 20種ほどでした。
最近確認していませんでしたが、見たら 2009年に 2種が新種として記載されていましたね。
どんどん新種が見つかっているんですね~。
そのうちのなんと 4種(たぶん)“えのすい”にいます!
なぜ「たぶん」かというと、4種のうちよくわからないのが 2種類いるからです・・・。
同定できないんです・・・。
オハラエビはパッと見てわかる種もあるのですが、新種の可能性も考えることになるので、似たような形態のものが出ると、私みたいな形態学の素人では手に負えないのです・・・。
そこで一つの方法として遺伝子が出てくるのですが、4年前にJAMSTECに協力していただいて調べた時には一種類だけ微妙な感じで何とも言えない結果に終わっているんです。

今展示に出ているのはその中の一種類、科の名前にもなっている”オハラエビ”です。
学名はAlvinocaris longirostris
角がある白い 5センチくらいのエビです。
そして今はバックヤードにいるエビで名前が確実にわかるのが、トウロウオハラエビ。
学名はOpaepele loihi
これは角がとても小さくて頭がヘルメット見たいにツルっとしているのでわかりやすいんです。
そして良く分からない 2種が、たぶん“オハラエビ属の一種”(Alvinocaris sp.)となると思います。

さてさて、その化学合成生態系水槽で展示中のオハラエビが、最近卵を産み始めました!
2006年に来たエビたち、なぜか今年になって急に産卵し始めたんです!
うーんなぜなんだ?
しかもいっせいに・・・。
環境変化の乏しい深海でも、産卵の季節や時期が決まっているんでしょうかねぇ?
水槽も、特に今年だけ特別なことはしていないんですが・・・。
とにかく、水族館ではえのすいくらいしか展示していないオハラエビが、なお且つお腹に卵を抱えているというかなり珍しい状態なので、ご来館の際はぜひ見てみてくださいね。

さて、水族館職員としてはふ化させて幼生を観察したいところです!
しかし、このオハラエビ属の幼生は今まで一度もうまくふ化させられたことがないんです。
ふ化しても元気なく沈んでしまうんです。
たま~にうまくいって元気な幼生もとれますが、それは顕微鏡下でふ化間近の卵を突いて割ってしまった時のこと。変ですよね。
これに関しては何か要因がありそうですが、まだよく分かりません。とりあえず、思いつくことからドンドンやってみようかと思います!

乞うご期待!

オハラエビ (C)JAMSTECオハラエビ (C)JAMSTEC

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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