2011年08月03日
トリーター:唐亀

友達の誕生日


23年前、「パル」は産まれました。
旧江の島水族館のマリンランドで。
海を知らない「パク」の息子。飼育下で産まれた三世代目のバンドウイルカ。
私が初めてあった時はまだ母親の「ルカ」にべったり寄り添っていて、時折お乳をもらっていました。
それから 20年。お互いに年をとりました。
一緒に出張催事に行ったり、潜水中にのしかかられて難儀したり、足を噛まれたり・・・。
今は部署が違うけれど、時折見る「パル」は変わらずにいるようです。

「パル」は今ではショーに出ていませんが、前方宙返りやスピンジャンプなどの大技を持っています。
特にスピンジャンプは逸品で、完全に水から出た状態で垂直に勢いよく回るのでとても爽快なのです。
そんな「パル」の思い出の一つをご紹介しましょう。

旧江の島水族館、ショーでの魚はアルミの汁缶(給食の食器のようなバケツ)を使っていました。
ショーが終わって片付ける時に、誤ってプールに落としてしまったのです。
当時のマリンランドのプールはやや透明度が悪く、今のように上から確認することはできませんでした。
すぐにウエットスーツに着替え、潜水で回収に向かったのですが、これが見つかりません。
ある程度重さもあるものなので、そう遠くに行ってはいまいと思いながらもどんどん範囲をひろげていきます。
イルカたちは別の部屋に収容されているはずですが、もしかしてすでにイルカたちが陸上に持って行ったのかとも思い、ステージに顔を出して確認しても無いとのこと。
再び潜水し探し回るのですが、やはり見つかりません。
どうしたものかと途方に暮れていますと、いつもと違う「音」がすることに気が付きました。
プールの中はポンプなどの振動音や、イルカたちの出す音が溢れています。
その中に金属を引きずるような音が・・・。
しかし、私は悲しいかな「人間」で、水中では音の方向が分かりません。
イルカたちは水中で音の来る方向を特定できますが、人間は頭骨全体で音を拾ってしまうため、音の方向が特定できないのです。

しかし、誰かがバケツを引きまわしていることは想像できます。
とにかく底を這うように、今までよりスピードをあげて泳ぎ回っていると・・・。
目の前に「パル」が。
頭にバケツをかぶった「パル」が、楽しそうにプールの底をバケツでなぞっているのでした。
その姿を見て水中で大笑いしてしまいました。
顔からバケツを外した時のパルの顔も目を丸くしていて印象に残っています。

「パル」は「パク」と「ルカ」の子どもで「パル」。
一見、単純な名前に見えますが、パルPALは「友達」。
とても彼に似合っている名前だと思います。

8月3日は「パル」の誕生日。そして、今年の 5月には「パル」の新しい息子が産まれました。
今、母親の「シリアス」と仲よく泳いでいますが、彼にはまだ名前がありません。
現在、彼の名前をみなさまに募集しています。
2月に産まれたフンボルトペンギンとともに良い名前をプレゼントしてあげてくださいね。

バンドウイルカ「パル」バンドウイルカ「パル」

イルカショースタジアム

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