2011年08月23日
トリーター:植田

昨日入館した新しい魚のこと


このコーナーでは最近水族館にやってきた生物や、新たに展示されるようになった魚のことがよく紹介されますが、本日もそのような魚をお知らせしたいと思います。

当館の目の前の海は、ご存知、相模湾ですが、特に真ん前の片瀬海岸から西方の茅ヶ崎海岸辺りまでの沿岸では、カタクチイワシのシラスを漁獲するシラス網漁が盛んです。
この漁ではシラスに混じって網に入る、いわゆる外道もいろいろ混獲されます。昨日水揚げされた魚に「イトヒキアジ」も混ざっていました。

このイトヒキアジ、名の通りアジ科の魚で、尾柄近くにはアジの特徴である「ゼイゴ」を持っています。体長が 90cmくらいまで大きくなる、大型のアジですが、当館にやってくるものは、もっぱら体長 10cm内外の幼魚に限ります。

この幼魚には一見アジらしくない特徴があります。背びれと臀びれの前の方の部分がやたらに長く延びて、長い糸を引っ張っているような格好をしていることです。この上下のひれの伸長は幼魚期だけみられる特徴で、成長に従ってひれは短くなり、鎌のような形に変わっていきます。

長く伸びたひれの理由を説明した文献を見つけ出せず、はっきりとした理由はよくわかりませんが、幼魚期に見られる特徴から、幼魚期の生存にかかわる形質-大型魚に捕食されにくいシグナルとして機能する、或いは幼魚期の餌の獲得に何らかの役割を果たしていることなど想定されます。
ただこれらはあくまで予想です。フィールドでの幼魚の行動や、彼らのすみ場所の環境要因からその答えは見つけられるかもしれません。

現在イトヒキアジは、「旬の水槽」でご覧いただけます。

イトヒキアジイトヒキアジ

相模湾ゾーン

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