2011年12月29日
トリーター:伊藤

小さな貝をちまちま数え


今年も残すところ 2日となりました。
寒い日々がつらいこの頃ですが、きょうは冷たい水を触りながらの作業でした。

深海コーナーのゴエモンコシオリエビの体をみると、黄土色の小さなツブツブが付いています。
「キノミフネカサガイ」と呼ばれる巻貝です。
カサガイの仲間はその名の通り、「巻き」がほとんどなくなって、カサ状になった殻を持っています。
江の島の磯に行けば、岩の表面に固着しているマツバガイやベッコウガサを見ることができます。
この仲間は、餌を探しに動いても、元いた場所へ戻って来るという「帰巣」の性質を持っていたりして、地味な割には注目されてきた仲間ですが、エビの背中で暮らしている種は何気に珍しいのでは?ということで、深海コーナーを担当していた頃、調査していました。

2009年にJAMSTECの調査に参加させて頂いた時に、他の研究者がサンプリングし終わったゴエモンをお借りして、貝の付着状況を調べました。
ただ、その時は飼育がうまくいかず、そのまま調査中断となっていました。
それから 2年、今展示飼育中のゴエモンたち(別産地)には貝が状態良く付着しており、しかも長生きしているというので、久々に調査を再開しました。
深海チームの紅一点、北嶋トリーターに補助してもらいながら、プラケースに水ごと入れたゴエモンの体表を四方八方から観察して、貝の付き方を見ていきます。
ゴエモンのお腹側を見る時には、プラケースを頭上に掲げなくてはならず、4℃のしずくがポタポタと目やツムジに落ちてきますが、気にせず黙々続けます。
とても地味な作業ですが、こんなことでもこつこつ続ければ、世界中で誰も知らない貝の暮らしぶりが分かるかもしれません。
そう考えるとワクワクします。

とはいえ、こういった作業は年内に目途をつけて、お正月(みんなで交代で、とびとびでしか休みませんが)は暖かい部屋でぬくぬくと過ごせたらと妄想しています。



航海採集日誌
沖縄トラフ・伊平屋北熱水活動域及び鳩間海丘

研究発表
鳩間海丘で得られたゴエモンコシオリエビへのキノミフネカサガイの付着状況

キノミフネカサガイキノミフネカサガイ

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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