2013年03月16日
トリーター:武藤

空からのメッセージ


新江ノ島水族館のイルカショースタジアムでは多種多様な生物が飼育されています。
バンドウイルカ、カマイルカ、オキゴンドウ、ハナゴンドウ、カリフォルニアアシカ、オタリアなど。
今思い付くだけでもたくさんの生物がいます。

しかし、イルカショースタジアムでは飼育動物以外にもいろいろな生物がいます。
「います」というよりは、「やってきます」といった方が正しいかもしれません。

例えば、鳥類がそうです。
頻繁に見られるのは、カラス、スズメ、トンビです。

このうちスズメはイルカショースタジアムに落ちているポップコーンなど細かなゴミを拾って食べてくれる小さな清掃員のような存在です。

それに対してカラスは清掃員というわけにはいきません。
カラスは私たちトリーターの隙を見計らっては、イルカやアシカたちの餌である魚をなんとか入手しようと頑張っているようです。
もちろんカラスたちも生きる為に魚を欲するのは当たり前なのですが、そこはイルカやアシカの為の魚ですので、トリーターも魚を取られないように細心の注意を払いつつ、いつかカラスたちとも分かり合える日がくるのを願っているわけです。

最後にトンビです。
私個人のイメージですが、以前はイルカショースタジアム上空を気持ちよさそうに飛んでいる印象が強かったトンビ。
しかし、最近は空から音も無く地上に急接近して、イルカショースタジアムにいるお客さまの弁当やお菓子を狙うこともあります。
トンビは警戒心が強いので、人間には近寄らないことが多いのが本来の姿ですが、イルカショースタジアム周辺のトンビたちはどうやら違うようです。

「鳶に油揚げをさらわれる」

ということわざの通り、人間に慣れてしまったトンビ。
私たちが気付きにくい遥か上空から、優れた視力で狙っています。

私も一度被害にあったことがあります。
この時は、バンドウイルカの「マリン」と一緒にトレーニングをおこなっていたときでした。
魚を手に持ちながら腕を後ろへ向けていると、突然手を叩かれたような感覚が走り、慌てて振り向き気が付きました。
私が状況を理解したときにはトンビは翼を広げて空へ吸い込まれていきました。
大きな翼を広げて滑空していた姿は、とても堂々としており、凱旋式を見ているようでした。

被害にあった直後には気付きにくいものですが、私は時々考えることがあります。
トンビやカラスがこういった行動にでる理由を・・・。
いろいろな影響があるとは思いますが、その中に少なくとも私たち人間が関係しているわけです。
そう思うと、一概に鳥達を毛嫌いするのはこれこそ人間のエゴだなと思います。
どうにかお互いが満足できるような環境になって欲しいものです。
さらには、一つしかない地球で、地球に暮らす全ての生物がともに満足して暮らせるようになればと思います。

ちょっと、大袈裟ですかね?

バンドウイルカ「マリン」バンドウイルカ「マリン」

イルカショースタジアム

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