2014年08月25日
トリーター:根本

サツマハオリムシ飼育ストーリー エピソード 1

サツマハオリムシサツマハオリムシ

夏休みも残りを数える時期になってきました。スロースターターのみなさん、そろそろ宿題に手を付ける気合いを入れていく時期です。ともにがんばりましょう!

さあ、私が前回日誌でサツマハリムシについて書いてから一か月が経過してしまいました。
実験の方は、念願だった「硫化ナトリウム海水溶液の開発」に成功し、なんと私を 7年苦しめた硫化ナトリウム添加による白濁「水槽内濁り湯状態」もほぼ解消することに成功しました!!
もう革命といっても過言ではありません!

とはいえ、展示飼育部内でもこの話をして共感してくれる人はいませんね・・・。
唯一の相棒である杉村さんも「反応が薄いこと、山のごとし」です・・・。
仕方ないのでこの喜びを日誌に記しておこうと思います。

とはいえ、サツマハオリムシ・・・、
しかも硫化水素での飼育の話・・・。
マニアックすぎます。
「いいね」が一つも入らない緊急事態も予測されます。
そこで、これまでのサツマハオリムシ飼育の歴史を、複数話で記しておきたいと思います。
これできょうの感動やサツマハオリムシの魅力も伝わるはずです!

まずは、この“サツマハオリムシ”について少し紹介しましょう。
チューブワームと聞くとピンとくる方もおられるかもしれませんね。
1977年に深海で発見された驚くべき生態系の一員であり、象徴的存在がチューブワーム。
その“驚くべき生態系”というのが「化学合成生態系」と呼ばれるものでした。
皆何に驚いたかというと、それまで動物達が生きていくためには必ず土台として太陽と植物が必要だと思っていたが、深海底のある場所には、地球から出る化学物質とバクテリアが土台となり動物を支えている生態系が存在していたからです。
常識を覆す大発見でした。
その魅力に見せられ、今も多くの研究者が化学合成生態系の研究をしていますが、まだまだ未知の領域が大半を占めます。

そしてガラパゴスでの化学合成生態系の発見から 16年後、1993年にサツマハオリムシは鹿児島湾で発見されました。
このサツマハオリムシの最大の特徴は「世界一浅い場所に棲むチューブワーム」であることです。
ほとんどが水深 200mを越える深海に棲むチューブワームが、鹿児島湾では水深 80m~ 100mで発見されたのです。
ただサツマハオリムシが浅い所が好きな訳ではない様で、その他の生息地(マリアナ諸島海域と南海トラフ)では 300m~ 400mで発見されています。
鹿児島湾では桜島など活火山が多い地形や海流などが奇跡的に 80~ 100mに 400m級の深海の環境を作り出したのでしょうか?
このようにして“人類に最も身近なチューブワーム”であるサツマハオリムシは人に知られるようになり、水族館では「いおワールドかごしま水族館」がいち早く飼育にチャレンジしたのです。
当時は生きたハオリムシ類の一般公開は世界初の試みで、海外からも見学者がいらしたようです。
1997年の出来事でした。

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