2014年10月03日
トリーター:櫻井

ウミガメの視点から見た子ガメの行動について ~妄想域の仮説~

アオウミガメ「シロ」と子ガメアオウミガメ「シロ」と子ガメ

本日 14時~ 15時までの一時間、ウミガメの浜辺担当であった。
陽射しが強く日陰に逃げ込んでもじわじわ汗ばむ。
アオウミガメのプールには、巨大な大人に交じって、昨年生まれた子ガメが泳いでいる。
子ガメを昨年生んだ母カメの「ノンキ」と、父カメの「シロ」、そして「エル」の 3頭。
子ガメは常に、「シロ」のお腹の下に隠れるようにぴったりとくっついている。
「シロ」は子ガメの父親であるとわかれば、『親子で仲が良いね』と思われるかも知れない。
私はその子ガメを、若干眠くほんわかした気持ちのよい状態で眺め、一つの仮説を立ててみた。
じっ、と一点を見つめ考えてみた。周りからはその顔が、間抜けに見えたかも知れない。

親子だから一緒にいるという見方は我々からしてみたら普通かも知れない。
子ガメの立場に立って考えてみた。
『自分の体の何倍もでかい奴らがうろうろしている。身を守らねば。隠れる場所は・・・』
生物を擬人化して捉えるのは危険だが、生物の立場に立って思考するのは大切である。

≪子ガメは「シロ」を、父親としてではなく、さらには同種としてでもなく、自分の身を守るための都合の良い岩か何かだと思っているだけではないか。≫

3頭の大人カメを観察していたところ、「ノンキ」と「エル」は、動きは遅いながらも常に動いており、「シロ」は呼吸のために浮上してきたのはただの一度であった。
一時間のほとんどの時間を水中に沈み、じっとしていた。
あまり動きのない「シロ」は、子ガメにとっては最適な隠れ場であったのではないか。
子ガメは時折「シロ」のお腹の下から這い出てきて、付近を泳ぎ、再びシェルター(「シロ」のお腹の下)に戻るという行動を繰り返していた。

これは確実に私の妄想レベルの仮説である。
データに基づいた考察でもなく、動物行動学に照らし合わせたわけでもなく、一時間の間に何となく妄想してみたに過ぎない。妄想レベルの仮説であれば幾らでも湧いてくる。
思うに、正しいか正しくないかというのとは別レベルの問題で、自分なりに仮説を立てて思考してみるというのは非常に重要である。
自分の仮説を信じて疑わない行動にさえ出なければ、間違いに気付き易くもなるし真実により早く近付けるのではないか。
何より人から教わった知識よりも、自分で考えた事実はより興味を持ち、自分だけのこだわりを持った知識となり、知的好奇心を奮い起こす。

子ガメの行動でもよいし、魚やクラゲ、イルカやペンギンの行動など、観察して、仮説を立ててみてはいかがだろう。
生物を扱う水族館では、不思議と疑問で溢れている。

ゆっくりした動きのウミガメたちを眺めながら、こんなことを考える時間もめっきりなくなってしまっていたな、と、初心に返った思いであった。
ウミガメの監視という立場上、ごみが飛んでこないか、それをウミガメが食べてしまわないか、本来辺りをきょろきょろ観察しなくてはならない。
一点を見つめ妄想にふけっていて本当にすいませんでした。

ウミガメの浜辺

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