2015年02月24日
トリーター:根本

駿河湾の底引き網採集 第2弾

出発前のトラックとガソリン不足で雄叫びをあげる杉村さん出発前のトラックとガソリン不足で雄叫びをあげる杉村さん

今期 2回目の底引き網漁に杉村さんと佐野さんの 2名が先ほど出発しました。初めて乗船する若い佐野さんの元気な姿と、歴戦の猛者杉村さんの重い背中が対照的でした。
頑張れ佐野さん、杉村さん。
底曳網漁は結構ハードです。12時間を越える長い乗船時間に加え、永遠と続く弱った生物の蘇生作業、そして下船後の 3時間に及ぶロングドライブ&帰館後収容作業(約 2時間)。また採集や船上飼育ならびに輸送などは、回を重ねるほど気を使うべきことが見えて来るもので、作業は一向に楽にならず、やればやるほど忙しくなるものです。杉村さんの両肩に乗る不安やプレッシャーが同じ深海担当としてはよく解ります。佐野さんが元気に支えてくれることを期待したいです。
さて、今回の底引き網は比較的浅場でおこないます(小トロというそうです)。戸田から出る底曳網(大トロ)とは異なり出航時間も朝 5時頃と遅く、帰港時間も昼過ぎと比較的早く帰ってこれます。今回は海況も悪くなさそうなので、そんなに辛いことにはならないかと思います。成果を期待しましょう。

一般的に深海魚採集は表層の水温が下がる冬におこないます。深海というと水圧や光など飼育を阻む壁がいろいろありますが、その中でも水温は最重要です。2℃~ 3℃上がるだけで簡単に調子を崩しますし、弱いものは採集後 2~ 3日のうちに天に召されてしまいます。この季節の表層水温は約 13℃。ターゲットとしている水深 150m~ 300mの水温とほぼ同じになります。気温も低いので輸送中の水温変化も抑えられます。
これで魚以外は生かして持ち帰ることができます。魚はやっかいで、種によりますが水温の他に“水圧”が絡んできます。上がってくると風船のように膨らむものがいます。ソコダラの仲間やカサゴ類の一部では上がってきたときには風船のように膨らんで絶命しています。チゴダラやキホウボウなどは膨らまないものの、水の中に入れても沈めず徐々に弱るので減圧処置をするのですが、“えのすい”では注射器で余分なガスを体内から抜くという古典的な手法を使います。肛門から注射針を突き刺してガスが溜まっているところを経験を頼りに一突き!ここが腕の見せ所ですといいたいところですが、思うほどうまく行かないのがこの作業です。何度行ってもうまく行かないことがしばしば・・・。刺すたびにダメージは増しますが、やらなければその後生きる可能性は低い。葛藤に苛まれる難しい作業です。メンダコも含め頑張ってもらいたいところです。
出航は 25日朝からです。あすの昼ごろには船上からメールが来るはずです。

RSS