2016年05月12日
トリーター:杉村

JAMSTECとの共同研究:シロウリガイ類の長期飼育実験開始 その 1

みなさん、航海日誌は読んでいただけましたでしょうか?
今月GWまっただ中の 5月 5日〜 9日までの 5日間、“えのすい”の目の前の相模湾初島沖の水深 1000mの海底に棲息している化学合成生態系生物のシロウリガイコロニーの調査に行ってきました。

[ 2016/ 05/ 05 相模湾初島沖調査航海(1) ]

相模湾の海底に棲息しているシロウリガイは、エラの中に共生している化学合成細菌によって創り出されたエネルギーを摂取して生きているというとても特殊な深海貝です。
化学合成細菌は、海底からしみ出る硫化水素を元にしてエネルギーを創り出しています(化学合成)。

“えのすい”の相模湾大水槽などに見られる浅い海の中では、植物プランクトンが太陽光を元にして光合成をしてエネルギーを創り出しています。
植物プランクトンが創り出したエネルギーを食物連鎖によって、我々もイワシやサンマ、さらにはマグロなどの魚類という形で食べていますね。
水深 200mを越えると太陽光が海中に届きにくくなり、植物プランクトンは増殖できなくなります。
そこで、深海世界では太陽光の代わりに硫化水素(我々には毒ガス)やメタンなどを元にして細菌たちがエネルギーを創り出す世界があります。
熱水噴出域、湧水域(相模湾のシロウリガイ類)や鯨骨域などです。

シロウリガイはヘモグロビンを多く含んだ体液をしているので、私たちと同じで真っ赤な血を持っていて、目立つ臓器は大きなエラと足くらいと不思議な深海貝です。
エネルギー供給を鰓内の共生細菌に依存しているので消化管はほとんど退化してしまっています。

このシロウリガイは謎が多く、未だに生態についてはほとんど分かっていません。
“えのすい”ではこのシロウリガイの長期飼育の技術開発を目指して、JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)と共同で研究をおこなっています。
10数年前までは飼育期間が 3日でしたが、今では半年近い 173日まで飼育できるようになってきました。
しかし、“えのすい”のここ数年の研究によって、体内を詳細に分析してみるとまだまだいろいろなことが足りていないことが分かってきました。

今年度もシロウリガイの飼育試験が始まります。
長く飼育することだけでなく、その行動や生態についても、さらに一歩解明できるように頑張りたいと思います。

白くて動きの少ない二枚貝ですが、不思議の詰まった深海貝です。
少し長くなりましたが、今後に注目してください。


深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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