2023年09月23日
トリーター:加登岡

どこが違うかな?

9月も暑い日が続いていましたが、久し振りの雨空で、少し肌寒くなってきましたね。
ここから秋らしくなってくるのでしょうか?

さて、今回は相模湾ゾーンの相模湾大水槽で泳ぐ2種類のメジロザメ科のサメについてご紹介です。
この相模湾大水槽には今、ドタブカとクロヘリメジロザメがくらしています。
どちらも似たような体形で、似たような大きさであるため、ぱっと見で見分けるのは難易度が高いです。
お客さまにも上の方で泳いでいる2匹のサメは別々の種類ですと解説しても、頭の上に?が浮かんでいるのがよくわかります。見慣れないと同じ種類にしか思えません。
なので、きょうは2種の見分け方をお伝えします。

メジロザメ科の仲間はどれも似ているため、自分でもすぐ同定できるようになれないか、今 勉強中です。
このドタブカとクロヘリメジロザメをどうすれば見分けられるか、本や論文などで探してみました。
最初に簡単に見分けられるポイントは背中の正中線上に隆起があるか無いかです。

さあ、みなさんは写真でどっちがどっちだかわかりますか?
背中の正中線上に隆起があるのはドタブカです。無いのがクロヘリメジロザメです。
え、隆起ってどこ?と思った方もいるかもしれません。

赤丸で囲った場所です。わかりましたか?
2年前にクロヘリメジロザメを初めて飼育したときには、この背中部分が黒く筋の入った模様をしていたため、かなり迷ったことがありますが、ドタブカを飼育し始めて、間違いなく隆起しているので、これでもう分かります。
ただ、このポイントは正直近くでないとわかりません。水槽越しではなかなか見られないと思います。しかも、この2匹は表層を泳いでいることがほとんどなので、なおさら背中が見えません・・・

次のポイントは歯の形です。・・・これは絶対に見えません。
ただ、どんな形状かは、みなさんにお伝えしたいと、歯を探してみました。
サメは歯が何度も生え変わるので、抜け落ちた歯が水槽の下にあるかもと、がさがさ探してみました。
小石の中をかきわけると、クモヒトデやらゴカイやらが出てきますが、その中にサメの歯が無いかよーく観察します。
広い大水槽の中からわずか5mm程の歯を見つけるのはなかなか大変です。
たくさんいるドチザメの歯はときどき見つかるのですが、1匹ずつしかいないサメの歯はなかなか見つかりませんね・・・
何回か探して、ようやく一本見つけました!

それがこちら

見つかったのは下顎の歯でした・・・
ドタブカとクロヘリメジロザメは上顎の歯に違いがあるため、下顎ではどちらの歯かわかりませんでした。
ドタブカのほうが幅広の三角形で、クロヘリメジロザメは湾曲した鉤状になります。実物がないと説明が難しいので、また、探してみます。しばらく宝探しは続きそうです。

これらは文献などで書かれている分類形質です。この背中と歯は「近く」からしかわかりません。そのため、水族館に来て、見分けるためには現実的では無いですね。
ではどうすれば見分けられるか。
私ならではの相模湾大水槽での見分け方をご紹介!
まずは写真から。

みなさんはどっちがどっちだかわかりますか?
2枚の写真を見て、間違え探し?をしてみてください。
改めて写真を見てみると、模様も色もほとんど変わりませんね・・・

正解は上がクロヘリメジロザメで、下がドタブカになります。
クロヘリメジロザメの第一背鰭は正三角形のような形をしています。
一方のドタブカの第一背鰭後縁(背鰭の後ろ側)は切り立っており、下の方でくびれた形をした鎌状になっています。
また、クロヘリメジロザメの体高は高く厚みがあります。ここで水槽の外からでも見分けることができます。ただこれは、今現在、2匹が全長 1.2~1.4m だから、この水槽内では背鰭の形などで見分けることができますが、成長にともない形なども変化する可能性があるため、この先どうなるかはわかりません。
サメの種類によっては成長にともない体の一部のパーツが変化することが知られています。
クロヘリメジロザメとドタブカに関しては、どのように変化するか詳細を私が把握できていませんが、かつて調べたフトツノザメは尾鰭の形状と色彩に変化があり、ウバザメは吻先の形状が変わっていきます。
成長にともなう形態の変化がないかどうか引き続き観察していきたいと思います。

さて、今回はクロヘリメジロザメとドタブカの相模湾大水槽内での見分け方の話をしました。ぜひ、“えのすい”に来た際にはよーく観察して、2種を見分けてみてください。
また、あなたならではの見分け方を見つけてみてください。


[研究発表]

相模湾ゾーン

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