2014年09月03日

青森県・姉沼(3)新たな謎は嬉しい悲鳴

  • 期間:2014年9月1日~2014年9月3日
  • 場所:青森県東北町・姉沼
  • 目的:沼の生物の調査・研究
  • 担当:伊藤
戦闘機の爆音響くもと、もくもく調査。戦闘機の爆音響くもと、もくもく調査。


本日は私が参加する最終日。たまたまですが、今回の学生さんの担当する最後の現場調査でもありました。
めったに人が入らない場所らしく、沼の手前に高く伸びたヨシをかき分け、アブやカにバシバシ刺されながら、やっと沼にたどり着きました。
流入河川の河口に位置するためか、これまでの水域とは明らかに異なります。泥にずぶずぶと足を取られる感じが、ちょうど相模湾の干潟を歩いた時に近い感触です。

肝心の貝ですが、きのうまでの水域では、歩くたびに足にゴッツゴツと貝が足に当たるほどでしたが、きょうはそれがありません。
案の定、設置した調査区内でも全然貝が見つかりません。
頻繁に飛び交う戦闘機を眺めながら、あーあ、やっぱりいないか、と思った矢先、小さな貝が一粒、ジョレンに入りました。


超レアなヨコハマシジラガイ稚貝。
一体どこで育っているの?

見覚えのあるこれは、まさかのヨコハマシジラガイ!

本水域で幼貝の発見は初めてで、先生も大喜びです。
何しろ、とにかく採れないのです。
成貝はものの 5分で何百個も見つかると言うのに。本調査における大きな謎の一つです。
本種の幼貝の特徴は、他種と比べて固くて分厚い貝殻と、成貝の特徴である殻表の「しじら織」状の凹凸が、殻の縁まで及んでいる点で、黄色い梅干しの種のような雰囲気です。
ともあれ、成貝があれだけたくさんいるのだから、どこかに稚貝や幼貝が成長する環境があるはず。それを突き止めるのが次なる課題の一つとなりそうです。

調査というのは、すればするほどに、新しい発見があります。
本件の現場調査はこれにて終了。あとは、膨大なデータの取りまとめが、学生さんたちに圧し掛かるのみです。
研究はこれからが本番です。データの結果、何が分かり、何が新しくて、あわよくば何の役に立ちそうなのか、そうしたことを口頭で説明でき、文章として世に残すところまでが「研究」であり、「遊び」や「勉強」との違いだと思います。
彼らなら熱心にやってくれることと思います。私も微力ながら、お手伝いしていきます。

かくいう私も、こうして一時でも水族館業務を離れ、調査に参加することで「頑張らなくちゃ」という気持ちになります。
齢を重ね、ますます集中力の低下に悩まされる日々ですが、日々精進したいと肝に銘じながら、帰りの新幹線に乗り込みました。
電車内でパソコンを打つと、すぐに酔ってしまう質なので(車は全然平気なのに・・・)、このあたりで今回の日誌を終わります。
それでは、また次回お会い致しましょう。


1枚くらい魚の写真も。かわいい顔のヌマチチブ。


沼に繁茂するヒシ。種は固くて鋭いトゲ付き。
忍者のマキビシに使われたとか。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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