2010年07月19日
トリーター:根本

深海コーナの裏では


毎日暑いですね~。夏がやってきちゃいましたね。館内も目の前の海もとっても賑わっています。

さて、気温が上がると水槽の水温も上がるのですが、低い水温に設定している水槽では冷水機が水を冷やそうとして唸りを上げます。
この季節はだいたい一日中動きまくっています。
水槽が冷える分、冷水機の廃熱で部屋が暑くなるので、水槽が置いてある予備層は温室みたいになっています。
飼育員は汗だくです。
しかし、深海の裏だけはエアコンが効いていて、年中 20℃に保たれており、夏場は一息つける天国のような場所なのです!

いや、だったのです、昨年までは・・・。

今はオオグチボヤを飼育しているのですが、その水温が脅威の 1℃です。
1℃となると普段の冷水機では間に合わず、3台も冷水機が追加されています。その廃熱により涼しいはずの深海の裏も、他と変わらなくなってしまいました。
私が深海から連れて来たかわいいヨツバカワリギンチャクの水槽が、結露がでてしてしまっています。
効果抜群の扇風機もだんだん効かなくなってきました。
どうにかしなければ・・・。

そんな深海コーナーの裏ですが、他の水槽と違って展示側から丸見えです。日光海山の裏あたりをよくよく見ると、水槽が 4つ置いてあるのが見えると思います。
実験水槽という水槽なのですが、その 1つにユノハナガニが暮らしています。展示のユノハナガニと種類は一緒なのですが、採集場所が違うので分けています。
その中の 1個体が先日卵を産みました。
オレンジ色の小さな卵です。
フンドシの端からチラっと見えます。
まだ小さな個体ですので卵数は多くないのでしょうね。
大きな個体ではコンモリと抱いていますから。

実は、ユノハナガ二の繁殖は誰も成功した事がありません。ふ化させて幼生までは成功しているのですが、その先は未知の領域です。
“えのすい”でも過去に数回卵を産んでいます。
別の水槽に移して飼育したりしたのですが、なぜか死んでしまったり、卵を落としたりしてうまく行きません。
きっと何かストレスになってしまっているのでしょうね。
何もしないと、ある日幼生が出ていたりします。
下手にいじらず優しく見守るのが良いのでしょうか。

そこで今回は、今いる水槽の右側をアクリル板で仕切って個室を作り、飼育することにしました。
アクリル板に小さな穴が開けてあり、仕切った中に細いホースで注水することにより水が緩やかに入れ替わるような仕組みになっています。
たとえ幼生がふ化しても、簡単には流れていかないはずです。
これでしばらくようすを見ます。
果たしてうまくいくでしょうか。

夏休みの自由研究の始まりです。

ユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTEC

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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