2011年08月01日
トリーター:根本

熱水とエビ


前回のオハラエビの日誌を読んでくれた方、ありがとうございます。
きょうはその続きです。

“えのすい”のバックヤードツアーに来ていただいた方にはおなじみの “クラゲ生産室”。
室内には水槽やビーカーが並び、いろいろな種の赤ちゃんクラゲやおとなクラゲがたくさんいます。
我が水族館の要と言える重要な部屋ですが、その目の前に深海チームの隠し部屋“低温室”があることはご存じですか?
この 4℃に保たれた 3畳ほどのこの低温室内には水槽が 18個あり、主にJAMSTECの航海で調査採集した生き物たちが暮らしております。
先日、そこに抱卵オハラエビたちの専用水槽を設置しました。
この水槽は水圧以外の熱水噴出域の要素をできる限り再現した「頭寒腹熱オハラエビ極楽温泉システム」を搭載しております。
このシステムは、強力に冷却した水槽の中に模擬熱水としてヒーターを入れ、水槽内に局所的な温度躍層を構成しています。
故郷と近い環境を提供し、母エビたちに好きな温度環境を選んでもらえるようになっています。
“えのすい”ではユノハナガニの展示水槽にこのようなシステムを採用しており、そこではユノハナガニが裏返しになってせっせと背中を暖める行動、通称「カニバウワー」を見ることができます。
その行動の謎に私の北里大の後輩が迫っており、ユノハナガニは消化酵素の活性化に熱水を利用しているという研究結果を出しています。
また、水槽での観察で産卵間近の個体や抱卵個体が熱で卵を暖めるようすも観られることから、卵の発生にも関与しているのではないかなと私は思っています。

「じゃ、同じような環境に棲むオハラエビもきっと体や卵を温めたいはず!」

と思って作ったのがこの低温室の水槽。
ただエビは殻が薄いから、直にヒーターだと火傷してしまう可能性が考えられます。
そうなったらかわいそうなので、ヒーターを岩で被い、足場を作りました。
これが「頭寒腹熱オハラエビ極楽温泉システム」です。

そこに相模湾のAlvinocarisi longirostris(オハラエビ)と、水曜海山のOpaepele loihi(トウロウオハラエビ)と、Alvinocaris sp.(よくわからないオハラエビの仲間)の 3種類の抱卵オハラエビを入れました。
そして現在観察中です!
さてどのエビが暖まるのか♪
わりと浅くて暖かい所にも生息するトウロウが暖まっちゃうのかな♪
意外にみんなで取り合いになって、エビ団子状態になるかも!どうなるか楽しみです!

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頭寒腹熱オハラエビ極楽温泉システム頭寒腹熱オハラエビ極楽温泉システム

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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