2013年01月21日
トリーター:根本

テヅルモヅル


テヅルモヅル、漢字で書くと手蔓藻蔓?
それとも手蔓縺?
直接手で扱う人にとっては、名前も見た目も衝撃的な深海生物。 一度手にしたら二度と忘れられません。

字面の通り藻の様な手が蔓の様に長く伸び、陸上に上げればウネウネ動いて、その蔓が縺(もつ)れあいながら丸くなっていく姿は衝撃的。
生息する水深も人が潜れる深さから 1000mもの深海まで幅広く生息しています。
漁師さんの網に縺れることがあり、年に何回か水族館にやってきます。時には「気持ち悪い!」といわれてしまうこともあるでしょう。
でもですね、なかなか面白いヤツなんですよ。

テヅルモヅルはクモヒトデの仲間。
元の手は 5本ですが、それが何十、何百もの腕に分かれてメデゥーサの頭のようになっています。
これを世界で初めて見つけ、学名を付けた人もそのように見えたのでしょうね。
テヅルモヅル科の学名にはギリシャ神話に出てくるメドゥーサを含む三姉妹の通称である“ゴルゴン”からとったGorgonocephalidaeという名前が与えられています。

見た目によらず感性豊かで、その表現方法もとってもわかりやすく、調子が良さそうな時は一杯に腕を広げ、そうでもない時は丸まったり、時にはトコトコ歩いて行ったりと、見ているとだんだんと気持ちが伝わって来るような気がして、かわいらしく思えてきます。(自分の文ですが、発言がアブなくなってきました・・・。石になる日も近いかもしれません・・・。)

どんな時に元気一杯に手を広げるか?
いくつか条件があるようです。

夜は元気に広がっていることが多いです。
電気を消してしばらくすると、前衛的な生け花のように、天に向かって力強く広がっています。
つまり、光を感じる眼があるということですね。
ヒトデなんかは腕の先端にあると良いますが、クモヒトデの仲間はどうなのでしょう?
調べて見ましたが簡単には情報が得られずよくわかりません。とにかく暗い方が好みの様です。

では反対に、夜に懐中電灯などでいきなり照らすとどうなるか?

光を当てたとたん、テヅルモヅルはクネクネ、ウネウネと動きだし、かなり敏感に反応します。
嫌そうな雰囲気を醸し出して来ます。
棒で突いたりしたときも同じような反応ですから、きっと実際に嫌なのでしょうね。いきなり光を浴びて、相当びっくりしちゃっているのだと思います。

また、餌を与えたときも反応します。
餌を包丁でたたいて細かくしたものを、鳥の巣のように丸まってじっと固まっているテヅルモヅルに振りかけてやると、臭いを感じるのか、それとも接触が刺激になったのか、クネクネし始めます。
しかし懐中電灯のときとはちょっとようすが違うのです。
見た目は似ていますが、やる気がみなぎっている感じを受けます。
気持ちの高揚を全身で表しているかのようです。
そして絶好調になると、あの“前衛的な生け花”スタイルに変身します。

これが美しい!

杉村さんと「おー!すっ、すばらしい!!」
なんて喜んでいたりしますが、これは伝わりにくいでしょうね・・・。
水槽の前で 5分くらい演説できれば、このテヅルモヅルの良さを伝える自信があるのですが、水槽にある解説で伝えるにはどうしたら良いのか、飼育員の悩みどころです。
良さを伝えることは世の中にありふれている行為ですが、難しいものですね。
地味な生き物程飼育員のアシストが大事。
どうにかプロデュースしてテヅルモヅルをトップアイドルにしてあげたいですね。
素質は良いものがありますので、後はプロデューサーの腕にかかっているのです。

テヅルモヅル、スターへの足がかりとして杉村さんが作ってくれた「自動エサやり機」は効果抜群!
ジワジワ少しずつ餌が出て行くのですが、テヅルモヅルは大興奮!
光もおかまい無しに朝から元気一杯です。

あとは見せ方。
英語ではバスケットスター
スターになる素質は十分。

乞うご期待。

テヅルモヅルテヅルモヅル

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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