2013年04月19日
トリーター:伊藤

メダカの学校 補習です。


4月テーマ水槽も折り返し地点。
今回は補習。メダカの学校では伝えきれなかった分を補っていきます。

メダカ類の塩分耐性について
これは、私が研究中の分野の一つです。
専門書などには「メダカの仲間はサンマやダツに近い仲間。他の淡水魚よりも塩分に強い。」とあります。
しかし、私が知りたかったのは、野外において、彼らが海を介して分布を広げちゃう可能性があるのか?という点です。
日本のメダカが地域ごとに遺伝子が異なり、「藤沢メダカ」や「鎌倉メダカ」と分けられ、日本の北と南とで別種に分け「キタノメダカ」「ミナミメダカ」と和名が提唱されたことは知る人ぞ知ることです(今回の展示では「メダカ」と表記し、区別していません。新和名が提唱されてからも、しばらくようす見しています)。
ってことは、日本の長い歴史において、メダカが海を介してほとんど行き来していないことを暗示していませんか?
証拠はありませんが、他の淡水魚で考えられているように、地球が寒冷な時期に、湖化した日本海や瀬戸内海を渡ったり、大噴火や大地震による川の流れの変化や分断に影響を受けて、分布を広げた先で個体群を形作ってきたのでしょう。
いくら塩分に強くても、ボラやハゼみたいな感覚で海と川を行き来してはいないでしょう。このことは大変興味深いですが、とりあえず置いておきます。

私が気にしているのは、日本各地で問題になっている外来メダカ類のことです。
琉球列島や小笠原諸島では、川の上流から下流の汽水域まで席巻しており、網を入れども入れども外来メダカばかり、という場所も本当にあります。
さらに「まさかこんなところに放流しないでしょ」、というような人里離れた川にもいたりします。
最初に放流された場所から、海を通って分散した結果だとしたら、困りものです。

私が飼育下で調べたところ、ツルギメダカは塩分の急上昇に弱く、10日以上かけてゆっくり塩を足して濃くしても、海水中ではほとんど耐えられませんでした。
次に「グッピー」の場合、これも弱いのですが、もっと時間をかければ海水にも馴れます。ただ、自然界で川から海まで押し流されたとして、こんな悠長に塩分の上昇が起こるケースはまれでしょうね。
一方で、カダヤシ、コクチモーリー、ヒメダカは、1~ 3日で一気に塩分を海水並みにしても、結構耐えるのです。これだと、水の流れ次第では、海を介して近隣の川や汽水の干潟に生き着く可能性があります。野外での調査が必要です。

今回は、過去に調査していなかったセルフィンモーリー(まだ国内への帰化は報告されていないはず)を、試しに海水に馴らして展示してみました。
本種やコクチモーリーは原産国で汽水の湖や、沿岸部にも生息するそうなので、海水の環境はあんがい普通のことかもしれません。
コクチモーリーは水槽内でコケをよく食べてくれるため、海水水槽の掃除屋さんとして飼育される方もいます。
また、前回紹介したヨツメウオは、塩分の高い環境が当たり前であり、純淡水では逆に調子をくずしてしまいます。

あっ、気にせずお話をすすめていたら、居眠りしている生徒がちらほら・・・
大変長くなりましたが、それでは今回の補習はここまでにします。

関連日誌
2013/04/03 メダカの学校 課外授業

何気にメダカが一番、塩分上昇に強い何気にメダカが一番、塩分上昇に強い次点、結構強いコクチモーリー次点、結構強いコクチモーリーあんまり強くないツルギメダカ 今回は淡水で展示あんまり強くないツルギメダカ 今回は淡水で展示

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