2013年05月14日
トリーター:武藤

人と動物のショー


新江ノ島水族館のイルカショースタジアムでは、現在「きずな/kizuna」と「ドルフェリア~どんなときもそばにいるから~」の 2つのショーをおこなっている。
この 2つのショーの大きな違いといえば、出演者が違うということである。

「きずな/kizuna」ではえのすいトリーターが出演し、「ドルフェリア~どんなときもそばにいるから~」ではアクアンが出演する。

ショーの内容も当然ながら全く別の内容となっているのだが、この 2つのショーに共通することがある。
それは、どちらのショーも動物たちが登場するということ。

水族館でおこなわれるショーなのだから、動物が登場するのは当然のことだろうと思われるかもしれない。
私もそう思う。
しかし、動物たちにはショーという概念は無いとも私は思っている。
そもそも、ショーというのは我々人間が行おうとしているものであり、動物たちからすれば「大勢の人がいる時間」、や「音楽が流れている時間」などと考えているだけかもしれない。
動物たちは、我々人間のように来場者のみなさまに向けてより良いパフォーマンスを提供していきたいとは考えついていないかもしれない。

では、動物にとってショーをおこなうメリットとは何か?
いろいろとメリットはあるが、ここで全てを話すと長くなるので、今回はその中から 2つを話そうと思う。

1つは、動物たちの健康維持の為。
水族館で飼育している動物達は運動不足になり易い。それを解消する為にプールを最大限利用して運動も兼ねてショーをおこなっているわけである。

そしてもう 1つは、動物たちに良い刺激を与える場。
動物たち、特に鯨類は、とても好奇心の強い生き物なので、毎日その好奇心を満足させるほどの刺激が必要になってくる。
その良い刺激を与えられる場として丁度良いのがショーなのだ。

しかし、これらを充分に満たしたとしても、ただショーをおこなうだけでは何かとても勿体無い。
そこで新江ノ島水族館のイルカショースタジアムでは、言葉が通じなくとも動物たちとここまで仲良くなれる、という事を来場者のみなさまに観て知っていただこうとショーをおこなっているのだ。

みなさまの中には水族館のプールで暮らすより、広大な海で暮らした方が動物にとって幸せだと考える方もいると思う。
正直なところ、私はどちらが動物にとって幸せなのか解らないし、決められない。
野生の海では、広い海を泳ぐことができるが動物たちにとっての天敵もいるし、飢えとも闘わなければならない。
野生下で健康が保てなければ、すぐに命の危機がやってくる。

水族館のプールは、海と比べてしまえば狭いのは事実。
しかし、天敵になる生物はいないし、飢える心配も無い。
怪我や体調を崩した際には全力で治療する。
だから私はどちらの方が良い、とは簡単には決断できない。

少々話がずれてしまったので、閑話休題。

つまり水族館のショーとは、人間にも動物にも良い影響が起こる空間なのである。というより、そうでなければいけないと私は思う。
私たちトリーターは水族館で飼育している全ての生き物が幸せに一生を暮らせるよう願っているし、それを実行しなければならない。
毎日積み重ねる動物達との絆や信頼関係を存分に発揮し、みなさまに動物と触れ合うことのすばらしさや感動を伝えられればと私は思っている。

きずな/kizunaきずな/kizuna

イルカショースタジアム

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