2013年09月07日
トリーター:根本

オオグソクムシを少し深く考える

オオグソクムシオオグソクムシ

長い夏もおわり、水族館も落ち着いた日常を取り戻しつつあります。
タッチプールに出ていたオオグソクムシも 9日をもって展示が終了しました。
毎日の水替えと濾過槽の掃除、プロテインスキマーの導入と去年よりグレードアップしたメンテのおかげか、どの個体も元気に元の予備層へ帰っていきました。
この夏はニコニコ生放送でダイオウグソクムシの餌食い生中継をおこなったり、タッチプールにオオグソクムシを登場させたり、グソクムシの仲間が大活躍でした。
展示水槽では動かないことが多いオオグソクムシですが、タッチプールではかなりアクティブな姿をご披露できたと思います。
オオグソクムシのすてきな所は、歩いて、泳いで、まるまる所です。
タッチプールではそのよさをたっぷり紹介できたのではないかと思います。

自分自身もいつもより密に触れるせいか、興味も普段より湧いてくるものですね。
先日はふと「オオグソクムシはいったい時速何キロで泳ぐのだろう?」と気になり、速度計測を遊びで試みました。
「長さを決めたコースを何秒で泳ぎ切るか」といったものです。
オオグソクムシは泳ぐのがうまくどんな態勢でも泳ぐことができます。背泳ぎが非常にじょうずです。オオグソクムシをひっくり返して水中で持っていると、お腹の泳ぐための脚を徐々に動かしだし、回転数が上がったところで離すと魚雷のように進んでいきます。これを利用してタイムを計ります。
コースは約 40cm、泳ぎ切った時のタイムで速度を出します。
途中で曲がってコースアウトしたり、スタートラインで突然団子モードになったり、こまった選手が続出しましたが何とか計測に成功しました。
その結果は、

時速約 14km

となりました。
ただコースが短いので、加速し終わった途端ゴールに達してしまいますので、もう少しコースが長ければもっといい数字が出るかもしれません。
又は遊泳中の区間タイムを計れば 15~ 16kmくらいは出るのではないでしょうか。
そしてこの速度、なんと小学校 1年生女子の全力疾走とほぼ同じ速度が出ているということになります!
これは速い!
水泳 50m自由形男子の世界記録セザール・シエロフィリョが時速 8.6kmで泳ぎますがブッチギリで速いのです。
人類は毎日トレーニングを重ねても水泳で本気を出したオオグソクムシには全然勝てないのですね。
この遊泳力は自然界ではどんなふうに使われているのでしょう?
深海を自在に泳いでいるのでしょうか?
それとも襲われた時に使うのでしょうか?
深海に行ってゆっくり観察してみたいものです。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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