2014年09月04日
トリーター:鈴木

イルカ・クジラ入門 10 ~オキゴンドウに詳しくなろう~

オキゴンドウ「セーラー」オキゴンドウ「セーラー」

こんにちは鈴木です。
久々に入門シリーズを書いてみますね。

今までの入門シリーズでは、イルカやクジラの体のつくりや身体能力など、全てのイルカ・クジラに共通するような話が主でしたが、今回は個々の種にスポットを当ててみます。とはいいましても、鯨類は世界中に 80種近くいますので、全てをとり上げることはできません・・。そこで、ここはあくまで入門編ということで(かなり強引ですが・・)、“えのすい”で生活する種について書いてみようと思います。というわけで、最初は「セーラー(♀)」の愛称でお馴染みのオキゴンドウです。ちなみに、なぜ最初がオキゴンドウなのかといいますと・・実は私、昔から鯨類の中ではオキゴンドウが好きなんですよ(笑)
・・あ、もちろん、バンドウイルカやカマイルカやハナゴンドウも好きですよ。(^_^;)
これらにはついては、今後書いていきますのでお楽しみに。

では始めます!

和名:オキゴンドウ
学名:Pseudorca crassidens
漢字:沖巨頭
英名:False killer whale

本題に入る前に・・、このオキゴンドウいう名前、語尾にイルカやクジラと入っていませんが、体長が 4m以上になるいわゆるクジラです。名前にクジラとは付きませんが、広い分類ではゴンドウクジラというグループに入ります。

それでは、オキゴンドウについて掘り下げていきますね。
始めに、名前や学名についてです。
まず和名は・・
「オキ」+「ゴンドウ」に分解できます。このゴンドウとは、「大きな頭」という意味で、漢字では「巨頭」と書きます。その名の通り、ゴンドウクジラのグループは、口先が細くならず、詰まったような比較的大きな頭をしているものが多いです。次に、オキとは漢字では「沖」と書きます。これは、水深が深い沖合に棲息しているところから来ています。つまり、オキゴンドウとは「沖合に棲息するゴンドウ(巨頭)クジラ」というような意味です。どうですか、なーんだ以外に簡単だ、と思いませんでしたか?こんな風に、生物の名前は一見するとなんだかよく分からないものでも、分かってしまえばとても分かりやすい名前ばかりなんです。由来が分かると覚えにくい名前もすんなり入ってきますよ。
続いて学名は・・
あ、その前に学名とは現在、種として知られている全ての生物につけられる、ラテン語で表記された世界共通の名前の事です。和名は基本的には日本での名で、日本語を読める人にしか使えませんが、この学名は世界共通ですので、全世界で使えます。主に研究者の方々はこの世界共通の名前を使って、様々な国の研究者たちとやり取りをします。
ではまず、Pseudorcaですが、ギリシャ語で「偽りの」という意味のpseudosと、ラテン語で「クジラの一種」という意味のorcaからできており、意味はこれらに由来します。その後に続く、crassidensは、ラテン語で「太い、がっしりとした」という意味のcrassusと、「歯」という意味のdensから来ています。つまりまとめると「太い歯を持つ偽りのクジラの一種」ということになりますね。確かに、太い歯については、上下合わせて約 40本(ちなみに「セーラー」は 37本)の大きく目立つ歯がありますが、偽りのクジラって・・、一体何でしょうかね。なんだかオキゴンドウに失礼な感じがしますが・・。これは次の英名で謎が解けるはずです。
では英名は・・
Falseとは「偽物の、・・もどき」という意味で、killer whaleは、あの有名で人気の、海の王者「シャチ」です。訳すと、そのまま、「シャチもどき」です。なんだかどちらにも失礼な名前になっているような気がしますが・・、どうやら、シャチのように小型鯨類(ときにザトウクジラも襲うとか・・)を襲うところからこの名前が付けられたようです。場所によっては漁師さんからはシャチと呼ばれることもあるそうです。
そうそう、もしかすると、詳しい方は学名に入るorca(オルカ)でシャチを連想した方もいるかも知れません。確かにシャチ は学名のOrcinus orca からオルカと呼ばれることがありますが、あくまで語呂がいい愛称のようなものでorcaがシャチという意味ではありませんのでご注意を。
最後に少し余談ですが、細長い体つきから野菜のキュウリにちなんで、「キュウリゴンドウ」といった別名でも呼ばれることがあります。これまた大きなキュウリですね・・。

続いて大きさです。
最大でオス 6m、メス 5m、体重は 2t近くになるそうです(現在「セーラー」は体長 4.4m、体重は・・体が大きすぎて体重計に乗れず計れていませんが、おおよそ 700kg近いと思います。でもまだまだ成長しますよ!)。ちなみに、現在のオキゴンドウの世界最長飼育記録は静岡県にある下田海中水族館で飼育されていたメスのオキゴンドウ「ジャンボ」( 1960~ 2006)で、残念ながら既に亡くなっていますが、なんと 36年です(「セーラー」は現在、飼育年数は 25年、これからも変わらず元気でいて欲しいですね)。

次に生息域です。
調べた限りでは、オキゴンドウが特に多く棲息する海域として知られている場所はないようで、世界中の温帯や熱帯の暖かい海域(の主に水深が深い沖合)に広く棲息しているようです。もちろん日本近海でも見ることができますよ。野生で見られたら感動でしょうね!

最後に生態などです。
群れる習性があり 100頭以上の群れをつくって生活していることが多いようで、バンドウイルカなどと一緒に行動することも多いようです。体が大きいにもかかわらず、動きはかなり俊敏で、特に摂餌中には、急旋回や急加速、急停止を頻繁におこなうようです(ちなみに、“えのすい”では主に「セーラー」が怒って他個体を追い回している時などに、その機敏さが顕著に見られ、改めてオキゴンドウのポテンシャルを実感します・・)。
主食はイカや大型の魚類ですが、上でも書いたとおり、小型の鯨類やザトウクジラを襲うこともあるそうです。なんだか想像がつきませんね・・。

ざっと、こんな感じでしょうか。名前のところがかなりボリューム大ですが、面白い所でもあるのでつい筆が走ってしまいました・・。既に入門編ではないのでは?という声もありますが、そこは大目に見て頂いて・・m(__)mいつも難しくてすみません。

さて、いかがでしたか?
特に、よく“えのすい”に足を運んでくださっているみなさんは、“えのすい”に暮らすオキゴンドウの「セーラー」についてはかなり詳しく知っている方も多いと思います。ただ、そんなみなさんでも、オキゴンドウという生物を純粋に掘り下げたことの無い方もいるのではないでしょうか。自然のオキゴンドウたちがどんな暮らしをしているか、どんな生態か、そもそもオキゴンドウという名はどういった意味なのか、などなど・・。例えば人間同士でも、今まで知らなかったその人の一面を知ると一気に見方が変わったりするのと同様、その生物の知らなかったことを知ることで、今まで無かった違った視点で観察をすることができるはずです。今回書いた内容はほんのさわり程度でまだまだ詳しい内容、面白い内容がたくさんあります。この日誌が少しでも興味のきっかけになれば嬉しいです。
もちろんオキゴンドウやセーラーをよく知らない方も含め、実物を見たくなった際はぜひ“えのすい”へお越しくださいね。
「セーラー」とともに“えのすい”でお待ちしています(^^)


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