2023年12月16日
トリーター:伴野

イルカたちの仲良し度はいかに?

みなさんこんにちは!
現在ショースタジアムは閉鎖中ですが動物も人も元気です。

さて、“えのすい”に限らず、多くの水族館ではショー、トレーニング、その他のさまざまな仕事であっという間に一日が終わることが多いです。

しかし、イルカショーが無くなり少し時間ができました。
(みなさまに動物たちを見ていただけない、ショーをお届けできないことは大変心苦しいのですが)

この余暇時間や、勤務時間前後の自由に使える時間に実は飼育員の醍醐味が詰まっており、それぞれの個性が光る部分だとも私は思っています。

私も日中に時間を確保できるようになったのであることを始めました。
それはずばり、
「“えのすい”のイルカたちの仲良し度を把握せよ!」です。

感覚的に○○と○○は仲良しだよね~といった傾向は感じているのですが、実際に調べたことのあるトリーターはいません。

前から個人的趣味で気になっていたので観察開始です。

どうやって調べてみるか、とてもシンプルです。

➀ 観察個体を決める(本当は全頭を同時にみる必要があるのですが一人で観察しているもので…)

② 観察中に他個体と並走して泳いでいる秒数をストップウォッチで測定
(この、一緒にいるの定義が意外と難しいです。速度を合わせて意図的に離れずに泳いでいることをカウントしました)

③ 観察時間あたりの誰かといる時間の割合を求める

(かなり穴だらけの行動観察ですがあくまで傾向を把握するということでご容赦ください…)

結果はこのようになっています。

結論をいうとこれだけではまだ何もわからない!ということです。
そして実は「ルイ」、「サワ」、「ビーナ」、「リン」を対象にした観察はできていません。
さらに本当は同時に全頭を詳細に記録しなければ正確な結果を得ることはできません。
(同じ条件の中で全頭を見ることが必要なのです)
からの観察時間がまだまだ短すぎて一回の観察結果に引っ張られ過ぎてしまっています。

行動観察系の研究は、観察する行動の定義決めや正確な解析に必要なサンプル数を得るためには時間がかかることが難しいですね。
そしてこういう取り組みをしてみるといろんな発想が生まれて来るものです。
例えば、お客さまの力をお借りするとか!
本来正確に結果を得るためには全個体を同時に、詳細に観察することが必要です。
しかし冒頭でお伝えした通り、なかなか現役飼育員が多くの時間を費やすことができないのが現状です。
そこでお客様の力を借りるのです。“えのすい”にはありがたいことに瞬時にイルカを見分けることができる猛者たちがたくさんいらっしゃいます。

お客さまと一緒に観察できればいろいろと発展しそうだとは思いませんか。
これぞまさに「シチズンサイエンス」!?
(シチズンサイエンスとは研究者だけでなくて一般市民の方と進めていく研究や調査のことです。研究者だけは得られない膨大な観察データや情報解析が可能になります)

水族館の最大の魅力は目の前に生きている生き物がいるということです。しかしながら多くの水族館ではなかなか生き物をじっくり観察したり、記録を取ることができていません。

研究というと大層なことに聞こえるかもしれませんが、きっかけは生き物を面白がってじっくりと観察することだと思います。
海や生き物を面白がって観察することができる人が増えると、義務感から守らなきゃではなく、好きだから大切にしなきゃと思ってもらえるのではないでしょうか。
こういった次世代を育成していくことも水族館の大切な役割だと思っています。

水族館にお越しの際はぜひ、生き物を面白がってじっくりと観察してみてください。
なんでだろう? どうなんだろう? そこに生き物を解明するヒントがあるかもしれません。

それでは本日はこの辺で!

伴野お手製仲良し度観察シート(見にくくてすみません…)伴野お手製仲良し度観察シート(見にくくてすみません…)原本(スタジアムがオープンしたら参考に観察してみては?)原本(スタジアムがオープンしたら参考に観察してみては?)

イルカショースタジアム

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