2011年02月18日
トリーター:石川

抱卵


さて今年もフンボルトペンギンは繁殖期の真っただ中、ペンギンプールの中でも卵を抱いているペンギンたちがいます。
卵を温めるということは、単純なようでいろいろな段階を経てふ化に至ります。

以前、フンボルトペンギンの卵という題でトリーター日誌を書いた際に、ペンギンは卵を温めながら転卵するとお話ししました。
これは胚が卵殻にくっついてしまうのを防ぐためにおこなわれているということなのですが、爬虫類のウミガメなどでは逆に胚の位置が決まった時点で動かしてはいけないといわれています。
進化の過程ではいつ頃から転卵しなければならなくなったのでしょうか?
恐竜はどっちだったのか知りたくなります。

またこの転卵で発育が促されるともいわれていて重要なことのようですが、全く転卵しない卵でも確率は低いものの孵ることもあるようです。
この転卵は種類によって違うといわれていますし、転卵の角度、回数も違うようです。
角度は180°以内が理想といわれています。
転卵の回転は緩やかに黄身を支えるカラザ(スプリングみたいな形をしたもの)が耐えられる程度の回転でなければなりません。
フンボルトペンギンを観察しているとそんなに慎重に正確に転卵しているようには見えないのですが・・・ 。
どちらにしても生まれる数日前になるとこの転卵をしなくなるといわれています。

卵のふ化に大切なのはこの転卵と温度と湿度といわれていますが、実は湿度がかなり重要なカギを握っているようなのです。
少なくとも低いより高いほうがよいようで、45%以上が良いようです。
温度と転卵は当初から頭にはあったのですが、湿度が重要であるというのは観察している状況ではあまり気にしませんでした。
冬は親がほとんど覆いかぶさって卵が見えない状態ですが、5~ 6月頃では卵に身体が触れるか触れないかくらいでほんとにあたためているの?と疑いたくなるような状況、でもちゃんとコントロールしていたのですね。

またウミガメなどは、環境の温度によってふ化する雌雄が決定するそうですが、鳥類は遺伝子による決定で雌雄が決まり、卵の時点で変異することはないようです。
しかし、このあたりはまだ明確に解明できていないようです。

抱卵はペアが交互におこなうのですが、ペアによってまちまちで、いつまでも交代してもらえず身体が汚れていくのがとても嫌そうにしている個体もいれば、決まったように 2日間ごとに交代しているペアもいました。このペアはどちらかというと、これ以上はじっとしていられない、といったような雰囲気があふれていた記憶があります。

雛がふ化してからの観察も楽しいものですが、卵を抱いている時も実はいろいろな行動が観察できるので、この時期ゆっくり観察してみるのもおもしろいかもしれません。

ペンギンプールペンギンプール

ペンギン・アザラシ

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