2009年04月26日
トリーター:伊藤

泥の海を訪ねて( 6)


足元に天然記念物?

皆さんは天然記念物と聞いて、何を真っ先に思い浮かべますか?
トキ? ニホンカモシカ? オオサンショウウオ?
(これらは正確には特別天然記念物ですが)ちなみに私は「水田用水路の宝物」ことミヤコタナゴです。
いずれにしても貴重な生物に対して指定されます。
そんな天然記念物が、足の踏み場もないくらいウジャッといると聞いて信じられますか?

オカヤドカリ

「えっ?お祭りとかで売ってるよね」とお思いの方も多いのではないでしょうか。
売られている個体は全て、許可を得て特定の業者さん(記念物指定前から本種の採集を生業としていた方)が採集しているそうです。
私たちでも野外で出会うのは簡単です。沖縄の海辺へ行き、足元を見ながら 10分も散歩すればいいのです。
自然の残った場所ならば、足元に散らばっている貝殻のほとんどにヤドカリが入っており、じっと座って待っていれば、周りの無数の貝殻がコトコトと動き出すという不思議体験をすることが可能です。
恋人同士ならロマンチックな?展開もあり得ます。

さらに驚きの情報です。近年、静岡県や神奈川県でもオカヤドカリの仲間が見つかって、冬越しまでしているというのです。
温暖化の影響でしょうか、そう考えると微妙ですが、潮干狩りをしている横でオカヤドカリがトコトコしてたら思わず微笑んでしまいますね。
マングローブのエコを語る上でもっとも象徴的なオカヤドカリたち。
現在出回っているヤドカリたちは全てが採集個体です(そもそも水族館で飼育している生物の大部分は野生個体なわけですが)。

本種の子供どもはプランクトンですから、育てるのがとても難しいそうです。
ここ最近は、近縁のヤシガニについて、種苗生産技術がかなり進んでいますから、近いうちにオカヤドカリたちの飼育下繁殖も可能になるかも知れません。

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