身近な干潟は干潟となるか
新江ノ島水族館から最も近い「干潟」はどこでしょうか?
干潟っぽい環境ということであれば、江の島西岸にもありますが、名前に「干潟」とつく場所となれば、西へ自転車で 40分ほどの「相模川河口干潟」ということになります。
ただ、行ってみると分かりますが、干潟の景観は一応あるものの、底質は砂っぽく「シマッて」おり、コメツキガニやヤマトオサガニといった干潟でおなじみのスナガニ類は見つかりません。
試しに掘ってみてもアサリはもちろん出てきません。
そんな相模川河口に、ひっそりとすむカニがいます。
アリアケモドキ
平べったい茶色の甲らの横一文字に盛り上がったスジ、お腹の赤い「フンドシ」、極端に小さなメスのハサミと、地味ですがよくみると変わった特徴を備えた小型のスナガニ類です。
生息地は北から南まで知られるも、各生息地での生息数は多くなく、その生態も不明な点が多いといいます。
相模川では地面にぺたーっと張り付いた廃棄カーペットの下などに潜んでいました。
なぜ本種が生物の乏しい当地に出現するのかは分かりません。
たまたま幼生が流れ着いたからなのか、競争相手(=他のカニ類)がいない場所をいち早く利用し始めたからなのか。
もし後者であるならば、今後、相模川河口干潟は再び「干潟」として回復していくかも知れません。
今後もっと調査が進めば、いろいろと分かるかも知れません。
私も地元の学芸員としてその一助を担うべく、これからも相模川に足を運ぼうと思います。
・・・実は、他にもちょっと珍しい発見をしたのです。
そちらは別の機会に報告することにしますが、「その発見」はテーマ水槽をよーく見るとヒントがあります。
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