2009年11月
第16回 日本動物園水族館協会種保存会議(ポスター発表)
寺沢 文男
ゴマフアザラシ(Phoca largha)の保存を考える。
Ⅲ.繁殖年齢とその回数
寺沢 文男
新江ノ島水族館
[目的]
種保存の活動は本来の目的である、年次の血統登録によって日本動物園水族館協会(日動水)加盟園館の動物の頭数を把握して種ごとの調整が求められている一方、本活動はそれぞれの動物の膨大なデータベースでもある。これまでに、ゴマフアザラシの保護個体および飼育下繁殖の現状を調べた。
そこで今回、繁殖個体、その母獣および父獣を分析することで、ゴマフアザラシの繁殖年齢とその回数を知ることを目的とした。
[材料と方法]
2008年12月31日現在、ゴマフアザラシ血統登録全個体は1,060頭だった。
その中には二重登録などによって生じた欠番個体21頭を含んでおり、実質1,039 頭でその内訳は、繁殖個体540頭、保護個体470頭、不明29頭だった。
以下、繁殖個体の分析を行った。
[結果]
(1) 繁殖個体540頭の内訳は、オス239頭、メス248頭、性別不明53頭だった。
(2) 繁殖個体は、「母獣特定」484頭、「父獣特定」287頭だった。
(3) 母獣の繁殖最少年齢は2歳(保護2頭、繁殖1頭および不明個体1頭)で、繁殖最高年齢は、保護個体が推定32歳、繁殖個体が25歳だった。
(4) 母獣が生涯に最も多く繁殖した数は12頭だった。
(5) 母獣繁殖年齢は、保護個体8歳と13歳、繁殖個体8歳で繁殖頭数が最も多かった。父獣は保護および繁殖個体で8歳だった。
[考察]
今回、母獣および父獣共に類似の変動を示し、繁殖時年齢は8歳でその数が最多となり、以後徐々に減る傾向にあることが分かった。一方、現存するゴマフアザラシはオス7歳、メス4歳が最も多く(2008日動水血統登録)、近年保護個体が減少している中、全国規模のより明確な繁殖計画およびその推進活動が求められる。





