相模湾江の島における潮間帯のフジツボ類の分布

2010年02月
第54回 水族館技術者研究会(日本動物園水族館協会)
根本 卓 ・ 植田 育男 ・ 萩原 清司 ・ 伊藤 寿茂



相模湾江の島における潮間帯のフジツボ類の分布

○根本 卓(1), 植田 育男(1), 萩原清司(2), 伊藤寿茂(1) 
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 横須賀市自然・人文博物館

要旨
江の島は,相模湾の湾奥に位置する東西に広がる二等辺三角形をした陸繋島である.北東岸に人工海岸,北西岸に海食崖,南岸は海食台が発達し,陸繋砂州の西側から北西岸に河川水が流れ込む特徴を持っている.過去に行なった島全島におけるフジツボ類の生息状況の調査,および潮間帯動物相の調査に続き,種毎の分布と環境との関連性,種間の生息域の空間競争,生息状況の変化を見るべく継続調査を行った.
江の島の海岸に23地点の調査地点を設け,各地点の潮間帯を上,中,下部に分け,それぞれの部位で10cm×10cmの方形枠を用い枠内のフジツボ類の生息種の同定と計数を行った.
また,河川水の影響並びに水質を測定するため,調査地点の水温,塩分,pH,COD の測定を行なった.調査の結果,カメノテ,シロスジフジツボ,タテジマフジツボ,ドロフジツボ,イワフジツボ,クロフジツボ,ヨーロッパフジツボ,アメリカフジツボ,アカフジツボ、オオアカフジツボ,ココポーマフジツボ,ケハダカイメンフジツボの12 種の生息が確認された.江の島でのココポーマアカフジツボの生息は今回の調査が初記録となった.
また,それぞれの海岸でフジツボ類の分布が異なり,河川水の影響で塩分が低くCODの値が高い北西岸は,タテジマフジツボ,アメリカフジツボ,ヨーロッパフジツボの外来種3種が多く生息し,またアカフジツボとケハダカイメンフジツボを除く10種が見られるなど江の島で最もフジツボ類の多様性が高い海岸であった.
波あたりが弱く河川の影響の少なく人工海岸が大半をしめる北東岸は河口に近い場所で上記3種の外来種の生息が少数見られたが,全体的にイワフジツボが生息していた.
波あたりが強く外海の影響が強い南岸ではクロフジツボ,オオアカフジツボ,ココポーマアカフジツボ,ケハダカイメンフジツボが多くみられた.ケハダカイメンフジツボは南岸でしか見られなかった.

RSS