四国地方における2010年のミドリイガイの生息状況

2011年09月
2011年度 日本付着生物学会研究集会 講演/Sessil Organisms 28(2) P56
植田 育男 ・ 坂口 勇



四国地方における2010年のミドリイガイの生息状況

植田 育男(1), 坂口 勇(2)
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 財団法人電力中央研究所

研究の背景・目的 外来種ミドリイガイPerna viridis (以下、本種と略記)の四国における動向について、演者は2005年に調査を行い、7地点で本種の生息を確認した(植田、2006)。このときの調査は、四国の太平洋岸に調査範囲が限定され、瀬戸内海岸の状況は調査されなかった。そこで先の調査から5年経過した2010年の本種の生息状況を把握するために、2005年次より調査範囲を広げ瀬戸内海岸を含む四国沿岸で本種の生息に関する調査を行った。

方 法 調査対象地域は、四国地方の徳島県阿南市から香川県を経て愛媛県宇和島市までの紀伊水道、瀬戸内海、豊後水道の各沿岸と高知県内の土佐湾沿岸で、調査期間は徳島県-愛媛県下2010年7月11-13日、高知県下4月6-7日で、さらに高知県では2月18-19日、11月15-16日、12月22日にも調査を行った。
調査方法は演者らが行ったこれまでの西日本沿岸での本種の生息状況調査を踏襲した。すなわち、大潮前後の時期を中心に、干潮時にミドリイガイの付着する可能性の高い港湾や漁港内と周辺の護岸壁、養殖生簀、引き揚げられた漁船の船底など人工物を主な対象とし、徒歩で接近可能な潮間帯および潮下帯の場所を探索した。調査地点では携行したGPSロガーの緯度・経度の表示値を記録(本文中[]内表記)し、本種が見つかった場合、生死の別や付着状況を観察し、写真撮影を行った。さらに付着場所に直接手の届く範囲のものは一部個体を無作為に採集し標本とした。

結 果 今調査では28地点で調査を行い、基盤に付着した生貝が6地点で、死殻が1地点で見つかった。生貝が見つかった地点は、高知県土佐市宇佐町[33.44660°N, 133.44189°E]、同県須崎市浦ノ内灰方[33.44152°N, 133.42355°E]、同市坂内[33.40932°N, 133.35959°E]、同市大谷野見漁港[33.38179°N, 133.32244°E]、愛媛県八幡浜市八幡浜漁港[33.46129°N, 132.41744°E]、同県宇和島市宇和島港[33.22197°N, 132.55685°E]、で、死殻が見つかった地点は高知県香南市吉川漁港[33.53761°N, 133.69387°E]だった。1997年に香川県引田町、1999年に愛媛県双海町で本種が見つかったとの事前情報があった(植田、2001)が、徳島県北部から香川県、愛媛県北部に至る瀬戸内海岸では全く見つからなかった。生貝の発見場所は全て海上浮体の人工構造物とその付属物で、特に漁業関連資材への付着頻度が高かった。
生貝発見地点では、年間の最低水温を記録する冬季期間を経た後、新規加入前の4月もしくは7月に生息を確認したことから、これらの地点では本種が越冬したものと推定された。四国では本種が高知県と愛媛県下の太平洋岸に限定して生息する状況が伺われた。



Sessil Organisms 28(2) P56 掲載
著作権:日本付着生物学会
2012年3月,日本付着生物学会より転載許可

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