神奈川県(江の島)と茨城県(大洗町)と高知県(土佐清水市)で採集された正体不明のクラゲを分類学的に精査(形態観察やDNA分析など)した結果、ウラシマクラゲ科に属する未記載種であることが分かりました。
そこで新江ノ島水族館は、公益財団法人 黒潮生物研究所とアクアワールド茨城県大洗水族館とともに共同研究をおこない、この正体不明のクラゲをウラシマクラゲ科の新属新種として記載し「オトヒメクラゲ」と名付けました。
ウラシマクラゲ科はウラシマクラゲ属、ワタボウシクラゲ属、Halimedusa属(和名なし)の 3属、4種が知られています。これらのクラゲたちは、傘の縁に触手を 4本( 4群)、放射管を 4本もつことが知られていました。
それに対し、オトヒメクラゲは触手を 8本、放射管を 8本もつため、他種とは容易に区別することができます。傘は 1cmほどで丸く透明、各触手の基部から傘の表面に沿って 8列の外傘刺胞列(がいさんしほうれつ)が伸びることが特徴です。
また、本種の触手にはまち針のような形をした刺胞の塊が多数並んでこん棒状になっています。そのため、属名にはギリシャ語で「 8本のこん棒」を意味する「Octorhopalona」を採用しました。
オトヒメクラゲの和名は「浦島伝説」に出てくる「乙姫」に由来します。
外見が本種に近縁の「ウラシマクラゲ」に似ていること、それに比べて最大サイズが少し小さいことから、この和名を選定しました。浦島伝説は江の島にも伝えられており、ゆかりのあるクラゲとして長く愛されて欲しいという思いを込めています。
江の島周辺で毎年春や夏に出現し、今回採集された個体は今年の 7月下旬に“えのすい”の目の前の砂浜で採集されたもので、2022年8月4日(木)より、アクアワールド茨城県大洗水族館と同時に展示を開始しました。
本種の生活史はまだ解明されていないため、今後は繁殖を目指して飼育を続け、情報を積み重ねていきます。
この研究成果は2022年6月21日に、スイスの学術雑誌「Animals」に掲載されました。