2007年10月19日
トリーター:植田

海外旅行の日にちなんで

きょう 10月19日は語呂合わせで、「遠く(10)」へ行く(19)」ところから、「海外旅行の日」に指定されています。
この日は海外旅行の楽しみ方などについて、改めて考える日のようですが、私たちが毎日相手をしている海に住む生き物の中で、海外旅行?をするものたちについてちょっと考えてみたいと思います。
ただし、文字通り「海外旅行」をしてしまうと、海の外に出ることを意味するので、海の中に住む生き物はそのようなことはできません。死んでしまいますものね。
そこで、言葉を拡大解釈して、広範囲に旅をすることで考えてみますと、まず代表的なのは、死滅回遊魚たちでしょう。
例えば、当館の前に広がる海―相模湾には夏から秋にかけて黒潮の流れに乗ってたくさんの熱帯海域生まれのいわゆる熱帯魚の子どもたちがやってきます。年によって、黒潮の流れは変化し、熱帯魚の子どもたちも多い年もあり、また少ない年もありますが、例年いくらかは見ることができます。
ところが、季節が変わり秋から冬へと時が経つとともに、海水温は気温と同じく徐々に下がり、年が変わる頃には江の島の前の浜あたりでは 15℃を切るぐらいにまでなってしまいます。
元来熱帯の海に暮らす熱帯魚たちにとって、その温度は到底耐えられるものでなく、ほどなく凍え死んでしまいます。

死滅回遊や無効分散と呼ばれる、一見無意味とも思われがちな生き物たちの毎年の旅ですが、何年も何年も無駄な旅を繰り返す中で、ある年ふっと冬越しのできる新たな棲み場所にたどり着くことがあるかもしれません。
何千年や何万年の時間をかけた繰り返しの中で、チャレンジャーがパイオニアとして新たな生息地を手に入れることになるかもしれないと、今年も熱帯魚の子どもたちは相模湾にやってくるのです。

今月のテーマ水槽のお題は「海の中の旅人たち」です。現在テーマ水槽コナーで、今年のチャレンジャーたちに会うことができます。

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テーマ水槽

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