2008年02月17日
トリーター:伊藤

飼育難易度特Aレベル!白い貝と黒い貝

昨晩、家族がテレビでフィギアスケートに熱中していたのを、横でウッツラウツラしながら流し見していると、1位の選手のドレスの色が、「白と黒のモノトーン」であることをTVアナウンサーが分析?していました。
その分析内容はさておき、「白と黒」というところだけピックアップして、きょうは二枚貝の話です。

水族館の使命として、野生動物の長期飼育と繁殖技術の確立があります。
当館ではクラゲやイルカなどいち早く技術をモノにしていますが、実は意外にも飼育が成功していないのが、二枚貝です。当館では最近、特に飼育が難しい 2種類の二枚貝に挑戦中です。

「白い」貝こと「シロウリガイ」は 750m以深の深海底の湧水近くにすみます。JAMSTECの深海探査機で何度か採集して飼育を試みましたが、多くは数日内に口を半開きでとろけるように死んでしまいます・・・ 。
世界で初めてなされた当館の学術報告上の飼育記録はたった 17日で(それでも論文になるほどスゴイ!というわけです)、それ以上生きたこともありましたが、繁殖など夢のまた夢、という段階です。
脚から硫化物(硫黄温泉の水のような、タマゴの腐ったような臭いがします)を取り込んでいるらしいのですが、まずはうまく糧をとらせる方法を編み出したいところです。
 
「黒い」貝こと「マツカサガイ」は田んぼの溝っこなどにすみます。昔はたくさんいて、子供がおやつに食べたりしていたモノらしいですが、今では田んぼの周りの圃場整備などの影響でレッドデータブックに載るほど希少になっています。
この貝は希少魚のタナゴ類が卵を産みつけるために必要な「ゆりかご」なので、ぜひ、その生態の解明から飼育繁殖へとつなげたいものです。
マツカサガイは生きたまま数か月生かすことはできますが、年単位の長期飼育や繁殖は夢の中です(新鮮な水路の水が絶えず手に入る環境なら別です)。
さらにこの貝、幼生の頃は何と「寄生虫」で、川魚のえらなどにかみ付いて寄生して育ちます。その魚は何でもよい訳ではなく、以前調べたところでは、タナゴやモツゴはダメで、ドジョウはまあまあ、ヨシノボリやカワムツが好ましいという結果でした。
魚からポロリと離れた稚貝は長い足を伸ばしながら動いててカワイイのですが、そこから先なかなか育ちません。今後は餌やら底質やらを考えていかなくてはならなそうです。
これらに限らず、二枚貝は身近なアサリやハマグリですら、飼育が難しいものです。
実は相模湾の在来ハマグリは人知れず絶滅していますし・・・ (砂浜で拾える殻は昔のものか、後でまいたものなど)。
もし「家のタライでハマグリをずっと飼えてるよ!」という方がいましたら、スゴイです。胸を張ってよいと思います。

在りし日のシロウリガイ(深海化学合成大水槽内) 在りし日のシロウリガイ(深海化学合成大水槽内) 調査現場でのマツカサガイ調査現場でのマツカサガイ

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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