2008年03月18日
トリーター:根本

深海生物の眼は何が見えるの??

「洞窟や深海に生息するものは、光が届かない環境に適応進化し眼は退化してしまう・・・ 」なんて事を聞くと思わず頷いてしまうけれど、実際は深海魚には立派な眼を持つものがほとんど。しかも一般的な環境に棲む魚よりむしろ大きかったりもする。
キンメダイなんかとっても大きな眼を持っていますよね。深海は暗黒の世界。暗やみの中であの眼はいったい何の役にたっているのだろう??

こんなことを考えた方は案外たくさんいらっしゃるかもしれません。そして、研究をされている方がやっぱりいらっしゃいました。
先日「しんかいシンポジウム」という、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が主催の研究発表会に参加してきました。これは一般の人でも参加可能なイベントなのですが、ここで“深海性魚類のバラビクニンは何をみているのか?”についての研究発表がありました。
水深 1500mに棲むバラビクニン。彼らの眼を調べてみると、どうやら一般的な魚の 1000倍以上の感度があるらしいとのことでした。退化どころか物凄く敏感な眼を持っていたのです。
水深 1000mにも日光がほんのわずかだけれど届くといいますが、この光を貪るように見ているのでしょうか?それとも発光生物を見つけて食べるため?
お腹の中の食べたものを見てみると、オハラエビやゴエモンコシオリエビといった発光しない生物が入っていたそうですので、発光生物を餌として見つけるためではないようです。
でもこのバラビクニンの眼、感度は良いけれど物を映像として見ることができないそうです。つまり明るさは敏感に感じられるけど何にも見えないということらしいです。
それじゃ餌を見つけるのに役に立たないのでは・・・?
いったい何のための眼なのでしょうか?
うーん、まだまだ深海魚の世界は奥深い。

魚以外では、眼が退化しているものが多いような気がします。ユノハナガニでは眼は甲羅の中に埋没していますし、熱水近くに住むオハラエビ類では赤外線を見るセンサーに変化していたりします。ゴエモンコシオリエビは眼がありません。戦略はいろいろなのですね。
深海生物の眼に関して今のところ詳しいことはわかっていませんが、“えのすい”では深海生物の眼に優しいといわれている赤い光を照明として使っています。なのでフラッシュはダメですよ!特に展示しているザラビクニンでは要注意です。もしかしたら、この種も 1000倍以上の感度かもしれないですからね!

展示中のザラビクニン展示中のザラビクニン

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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