2008年05月15日
トリーター:植田

磯観察のルール

当館では、年間に何回か展示生物の入手のため地先の海岸に出かけ、生物採集(トリーター内ではこれを磯採集といっています)をおこなっています。
狙う生物はカニ類やヤドカリ類、エビ類、それにウミウシの仲間を始めとした巻貝類などで、いわゆる漁業権に抵触しない磯の生き物たちです。

先週の 5月8日に、三浦半島のとある海岸に採集に出かけたときのことです。
この日の目的はカニ類とウミウシ類でした。
特にカニについては、岩場に転がっている大小の石をひっくり返し、石の下に隠れているヒライソガニやオウギガニの仲間を採集しようとしたのですが、どういうことかそれらのカニが全く見当たらないのです。
いくつもの石を当たったのですが、どの石の下もカニというカニの姿がありません。
いつもなら、最初の数個の石で、必ず何匹かは採集される、磯の生き物のメジャー中のメジャーがこの日に限っては全く採集されないのです。
不思議に思って、ひっくり返した石をよく見ると、ひっくり返した裏側にアオサなどの海藻が生えているではありませんか。
どの石もことごとく裏側から海藻が出てくるのです。
これはどういうことなのでしょうか。

察するところ、5月3日から 6日にかけての連休中に、大勢の人がこの海岸にやってきたように思われます。
特に 4連休の最終日の 6日は好天に恵まれました。
しかもこの日の最干潮時刻は、手元の資料ではこの海岸にほど近い江の島で午前 11時18分、潮位も 2cmとかなり潮がよく引いたことが分かります。
お昼前の時間帯に海岸に繰り出した人々が、磯遊びのために石をひっくり返し、中には見つけたカニを採集し、ひっくり返した石はそのままにして帰って行ったのではないかと思われます。
ひっくり返された石の下の住人たちは、馴れない日差しと、ほどなく襲ってきた乾燥に息も絶え絶えといった状況だったかもしれません。

現在当館のテーマ水槽のコーナーでは、「なぎさの観察体験便利マップ」と題して、磯観察についての展示をおこなっています。
その中でなぎさ観察のルールも紹介しており、観察のためにひっくり返した石は、観察が終わったら元通りに戻しましょう、と謳っています。

次回磯遊びにやってきたときに、また生き物たちの生き生きとした姿が見られるように、ひっくり返した石は絶対に元の状態に戻しておきたいですね。

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